グルタミン酸が神経系に大きな影響を及ぼす理由の1つとして、中枢神経系において興奮性の神経伝達物質として使われているためです。
しかも、グルタミン酸はシナプスの外側に漏れ出し、そのことによって様々な脳機能を生み出していることも近年になって確かになっています。
上図はシナプス外に漏れ出すグルタミン酸を示しています。
そもそも、神経伝達物質と言えば、アセチルコリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどを想像しますが、実際のところ、脳内で最も多く使われている神経伝達物質はグルタミン酸になります。
神経伝達物質として使われているアミノ酸は他にもあり、アスパラギン酸、グリシン、y-アミノ酪酸(GABA)などです。
アスパラギン酸はグルタミン酸と同様に中枢神経系における興奮性の神経伝達物質として使われており、グリシン・GABAは中枢神経系における抑制性の神経伝達物質として使われています。
また、ドーパミンやノルアドレナリンはアミノ酸のチロシンが変化したものであり、セロトニンはアミノ酸のトリプトファンが変化したもの、アセチルコリンの元であるコリンはメチオニンが変化したものです。
そして、いずれもアミノ酸由来の窒素原子を含んだ窒素化合物になります。
なぜアミノ酸やアミノ酸の誘導体が神経伝達物質として使われているのかを考えると、生物が進化の途中でそれを使うことに決まったという答えが最も妥当なものになります。
それ以上はあくまでも憶測の域になりますが、アミノ酸という物質は生物であれば例外なく持ち備えている分子であるため、枯渇しにくいことが挙げられます。
さらには、アミノ酸は遺伝子の本体であるDNAに暗号として直接に書き込むことができる唯一の物質であり、その種類を比較的確実に子孫に伝達できるからです。
もう1つあげるとすると、神経細胞のような専門化した細胞でも比較的容易に準備できる簡単な化合物であることが考えられます。
実際に、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、GABAを神経伝達物質として選んだ神経系は安定しています。
この4種類のアミノ酸はどれも非必須アミノ酸であるため、栄養素として外部から取り込まなくても、炭素源とアミノ基さえあれば自ら生合成できるものであります。
今回のまとめ
・脳内で最も多く使われている神経伝達物質はグルタミン酸である
・アミノ酸やアミノ酸の誘導体が神経伝達物質として使われている
→理由①生物が進化する途上でそれを使うことが決まった
→理由②アミノ酸という物質は生物であれば例外なく持ち備えている分子であるため枯渇しにくいこと
→理由③アミノ酸は遺伝子の本体であるDNAに暗号として直接に書き込むことができる唯一の物質であり、子孫に伝達できること
→理由④神経細胞のような専門化した細胞でも比較的容易に準備できる簡単な化合物であること
・グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、GABAは神経伝達物質として使われており、この神経系は安定している
今回は以上になります。