カラダ全体を考えたときに、最も大きなアミノ酸プールだと言えるのは、筋肉細胞の細胞内液になります。
すなわち、多くのアミノ酸が蓄えられている場所は筋肉であるということです。
筋肉のアミノ酸プール中に多い順に配列すると以下になります。
①グルタミン
②グルタミン酸
③アラニン
④グリシン
⑤アスパラギン酸
ちなみに、これらはすべて非必須アミノ酸です。
血漿中アミノ酸組成では、最も多いのはグルタミンであって筋肉中と同じ傾向であるが、血漿中ではグルタミン酸は20種類のアミノ酸のうちで最も少ない、すなわち、グルタミン酸は筋肉中には多いが血漿中には少ないということです。
また、各アミノ酸の濃度は筋肉細胞内液では桁違いに濃く、「アミノ酸プール」と呼ばれるだけのことがあり、例えばグルタミンは血漿中であれば約600μmol/Lであるが、筋肉細胞内液では19,970μmol/Lになります。
血漿中では最も少ないグルタミン酸が、筋肉細胞内液では2番目に多いことは、大変重要な意味合いがあります。
まず基本として、このアミノ酸が体内で生合成されるときは、はじめにグルタミン酸が生じ、それを元にしてグルタミンが生じることです。
このとき、グルタミン酸の水酸基(-OH)がアミノ基(-NH₂)に変換されるのですが、このアミノ基は体内で生じたアンモニアに由来するものであり、体内のアンモニア(NH₃)処理の一端を、この反応が担っているということになります。
筋肉はグルタミン酸およびグルタミンの生合成量が多いため、アンモニア(NH₃)を解毒する臓器としても重要であり、肝機能が弱っていても、ある程度の筋肉量を保っていれば、血中アンモニア濃度の過度な上昇を防ぐことができます。
しかし、長期入院などによって筋肉量の低下した患者では、この効果はほとんど期待できなくなります。
筋肉細胞内液にグルタミン酸が多い理由であるが、これは筋肉細胞がまさにグルタミン酸を製造している最中だということです。
このグルタミン酸は、やがてアンモニアおよびグルタミン酸構成酵素と出会ったときにグルタミンに変換されます。
そして、血漿中にグルタミン酸が少ない理由は以下のように解釈できます。
アミノ酸の血漿中濃度は厳密にコントロールされており、グルタミン酸についてはこの濃度が適正値として選ばれたということです。
いわば、生命の歴史がこの濃度に落ち着かせたと捉えることができます。
また、血液をカラダから外に取り出した場合、グルタミン酸濃度は上昇していく、このことは放っておけば勝手に上昇してしまうものを、生体はその濃度が上昇しないように、厳密に抑えていることに他なりません。
血漿中グルタミン酸濃度が不本意にも上がってしまった場合にどうなるかというと、体感的には吐き気や嘔吐などの症状がでます。
脳や脊髄などの中枢神経細胞と血管の間には血管脳関門があり、血漿中のグルタミン酸濃度は神経細胞に直接影響しないとされていますが、高濃度では明らかに影響を及ぼします。
また、新生児では脳の一部に変性が出現するなどの報告もあります。
そのため、高アンモニア血症の改善のために静脈注射などによって直接、血中にグルタミン酸を投与する場合は、その濃度に厳重な注意が必要になります。
なお、グルタミン酸を傾聴投与した場合は、その大部分は小腸粘膜細胞のエネルギー源として消費され、残りはアラニンに変換されるため、血漿中グルタミン酸濃度が大幅に上昇することはありません。
今回のまとめ
・筋肉は最も大きなアミノ酸プールと言える
・アミノ酸プール内に多いアミノ酸は、非必須アミノ酸である
・筋肉はグルタミン酸およびグルタミンの生合成量が多いため、アンモニアを解毒する臓器としても重要である
・アミノ酸の血漿中濃度は厳密にコントロールされている
今回は以上になります