口から多くのタンパク質を摂ったときも、ほとんどタンパク質を摂らなかったときも、全身の個々の細胞の周りを満たしている組織液中のアミノ酸組成や濃度は大きく変動しないように調節されています。

 

各アミノ酸の化学的な性質は様々であり、アミノ酸単体として担っている生理作用も様々になります。

 

そのため、それぞれのアミノ酸の含有比率が狂ってはいけないということです。

上記のデータは、各人から得た値の平均値および標準値を棒グラフで示しており、2回目と表示しているグラフは、同じ検査を1ヶ月後に行ったデータになります。

 

このグラフから大きく以下の4つを読みとることができます。

 

①血漿中には各種のアミノ酸が存在しているが、その存在量はアミノ酸の種類によって大きく異なること

②標準値が小さいことから、健常人であれば各アミノ酸の含有量には大きな個人差がないこと

③1回目と2回目のデータは見事に近似しているため、アミノ酸の組成や濃度は厳密に調整されていること

④最も多く含まれているグルタミン、2番目に多く含まれているアラニン、3番目に多く含まれているグリシン、すべてが非必須アミノ酸であり、このように多量に必要とされているアミノ酸は、自ら生合成可能な非必須アミノ酸であるということ

 

また、このデータとなった被験者の食生活が1回目と2回目で同じものを食べているわけではないにも関わらず、各アミノ酸の血漿中濃度が一定の値を示していることは驚くべきことになります。

 

このことから、カラダは必死になって血中アミノ酸濃度を一定に保とうとしていることがわかります。

 

上記したように厳密に調整されているアミノ酸ですが、健康状態を崩し、疾患を患うとそのアミノ酸濃度が変化することが確認されています。

上図は肝疾患患者の血漿中アミノ酸変化を示しています。

 

これを見るとチロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)が増加傾向を示し、バリン(Val)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)が減少傾向を示していることがわかります。

 

また、各種がん患者の血漿中アミノ酸濃度の変化が確認されています。

 

そのときに、簡単に血漿中アミノ酸濃度が崩れる場合があり、それはタンパク質あるいはアミノ酸を短時間に多く摂取したときになります。

 

血漿中アミノ酸濃度が適正値に近づくのは、大雑把な見方をすれば、タンパク質摂取から約240分後、すなわち4時間後です。

 

短時間で多くのタンパク質(アミノ酸)を摂取すると、それまでは全身の細胞は高濃度アミノ酸環境に置かれることになります。

 

このような濃度変化の様子は、糖質の多いものを摂取した後の血糖値変動に似ています。

 

ちなみに、ホエイは牛乳に含まれるタンパク質の20%、カゼインは80%を占めているものであり、ホエイはカゼインに比べてアミノ酸への分解が速いため、血漿中アミノ酸濃度を急激に変化させることになります。

 

そのぶん、変化した血漿中濃度は比較的速やかに適正値に戻ります。

 

逆にカゼインは、アミノ酸への分解が遅いため血漿中アミノ酸濃度の急激な変化は避けられるが、長時間にわたってアミノ酸濃度を高めてしまうことになります。

 

タンパク質やアミノ酸は必要不可欠のものでありますが、一度の食事におけるタンパク質の摂取量が多ければ多いほど、血漿中アミノ酸濃度を長時間にわたって大きく変化させてしまうことを知っておく必要があります。

 

今回のまとめ

 

・カラダは必死になって血漿中アミノ酸濃度を一定に保とうとしている

・疾患を患うことによって、血漿中アミノ酸濃度の値が変化してしまう

・血漿中に多く含まれているアミノ酸は非必須アミノ酸である

・短時間に多くのタンパク質(アミノ酸)を摂取することは、血漿中アミノ酸濃度を狂わしてしまう

 

今回は以上になります