タンパク質の製造工場にあたるのは細胞内にある「小胞体」になります。

 

この小胞体は、「粗面小胞体」と「滑面小胞体」に分けることができ、一般的には粗面小胞体が核の周囲に、滑面小胞体がその外側に位置し、これらはお互いに繋がっていて内腔は連続しています。

 

また、粗面小胞体の膜にはリボソームというタンパク質翻訳装置が組み込まれており、滑面小胞体にはリボソームはありません。

 

そのため、リボソームによって合成されたポリペプチドは粗面小胞体内で折り畳まれて完成したたんぱく質になり、その後周囲に存在する滑面小胞体に移動し、一定量が溜まるとゴルジ体に向けて輸送されます。

 

上図はタンパク質が製造される過程を示したものになります。

 

mRNAはタンパク質をつくるための設計図が書かれたものであり、細胞の核にある遺伝子の本体であるDNAから部分的に複製されてつくられたものです。

 

次にオレンジ色で示しているリボソームでmRNAの情報が読み取られて、その内容に基づいてアミノ酸が順次結合され、「シグナルペプチド(配列)」という分子がつくられます。

 

このシグナルペプチドが小胞体の受容体に結合します。

 

シグナルペプチドが受容体に結合すると、リボソームは小胞体膜に吸い込まれるようにして膜中に組み込まれます。

 

このリボソームでは、細胞が本来つくるべきタンパク質の設計図が書かれたmRNAが読み取れられて、それに基づいてタンパク質の元である「ポリペプチド」がつくられ、このポリペプチドは小胞体内にある分子シャペロンの力を借りながら折り畳まれてタンパク質になります。

 

このように小胞体は細胞内においてタンパク質を製造する現場になりますが、小胞体は袋状になっているため、内部にタンパク質が多く溜まると膨れてストレスがかかわるようになります。

 

これを「小胞体ストレス」と言います。

 

小胞体にはストレスを感知する各種のストレスセンサーが存在し、恒常的な小胞体ストレスは、それぞれのセンサーからの持続的なシグナル発信を誘発し、細胞機能を変調させてしまいます。

 

その細胞機能の変調の疾患の一部は以下になります。

 

膵臓のβ細胞に起これば、Ⅰ型糖尿病

神経細胞に起これば、神経変性疾患

上皮粘膜に起これば、ポリープひいてはガンの発生

網膜の黄斑部に起これば、加齢黄斑変性

 

恒常的な小胞体ストレスを防ぐことは多くの病気の予防になり、多くの病気を治癒させるためにも大切になります。

 

今回のまとめ

 

・小胞体は「粗面小胞体」と「滑面小胞体」に分けることができ、リボソームが存在するのは「粗面小胞体」になる

・小胞体は細胞内においてタンパク質を製造する現場となる

・小胞体がストレスを受けることを「小胞体ストレス」という

・小胞体ストレスによって、様々な疾患の原因になるので、小胞体ストレスを防ぐことが大切になる

 

今回の内容は以上になります。