夜9時に消灯。

今日も爆睡だな。

そう思っていたのですが――

 

夜中2時30分ごろ。

「ゴンッ。」

という音がしました。

少し目が覚める。

 

「……なんだ?」

こういうとき、なぜか母性本能が働く。

 

「何かあったのかな?」

と思っていると、しばらくして、

「お隣さん……。

お隣さん……。

看護婦さん呼んでくれんね。」

と声がしました。

「看護師さん呼んだほうがいいの?」

 

寝ぼけた頭で、

ナースコールのボタンを探す。

でも、お腹が痛い。

身体が思うように動かない。

「あれ?ボタンどこ?」

ゴソゴソしながら、

やっと見つけて、ナースコールを押しました。

 

そして、

「お隣の方がお呼びです。」

看護師さんがすぐに走ってきてくれました。

それで一安心。

私も、どうにかまた眠ることができました。

 


朝、起きたら……

寝たような。

寝ていないような。

そんな感じで早くに目が覚めました。

すると、

「昨日、横の方が気づいてくれたみたいよ。」

と看護師さんが話しているのが耳にはいってきた。

 

なんと私は、「救世主になっていた。」

 

私が何かすごいことをしたわけではありません。

ただ、

「みんな90代の熟女ばかりで、

耳が聞こえにくい中、私には聞こえただけ。」

あはははは。

 

でも、

「私、役に立ったんだ。」

と思ったら、

なんだかちょっと嬉しかった。


そして、やっとお風呂!

この日は、ようやくお風呂にも入れることに。

ひとりでゆっくり入る。

「ああーーー。」

やっぱり、風呂はいい。

身体が温まると、それだけでホッとする。

 

そして夜。

病棟に戻って、夜ごはんを食べたあとに

またしても、何やら聞こえてくる。

「あーっはっはっは!」

「……ん?どこから?」

 

よく聞いてみると、

入口にいる熟女が、テレビのイヤホンをつけたまま、

お腹を抱えて笑っている。

「あー、おもしろか!」

そしてまた、

「あーっはっはっは!」

どうやら、

テレビを見て大笑いしているらしい。

 

そして、その笑い声が聞こえているのは、

どうやら私だけ。

でも、その笑い声につられて、

私も、

「うふふふ。」

と笑ってしまう。

入院って、もっと静かで暗いものだと思っていた。

手術をして、痛くて、

動けなくて、ごはんも食べられなくて。

最初は、

「入院って大変だな。」

と思っていました。

でも、

思いがけず出会った90代の熟女たち。

「ファンファン」という声だったり、

夜中のナースコールだったり、

テレビを見て大笑いする声だったり。

なんだか、

病院にいるのに、妙に人間らしい時間を過ごしている。

そんな感じがしてきました。

 

そして私は思った。

人生の先輩たちは、

まだまだ私の知らない世界を見せてくれる。

入院していなかったら、

きっと出会わなかった人たち。

そう思うと、

今回の入院も、

ただ「病気になって大変だった」だけではないのかもしれない。

……まあ、

それでもお腹は痛いんですけどね(笑)