ICUから出た私はすぐに義理の母に電話をかけました






息を引き取った事を伝えると、義母は私を労ってくれました






義母だって悲しくてたまらないはずなのに、私に労いの言葉をかけられる義母の強さは凄いな…と思いました







私の両親への連絡はもう少し明るくなったらしようと姉と話し、2人で先程案内されたカンファレンスルームで待つ事になりました







すると循環器の先生から話があると言われ、私と姉がいるカンファレンスルームに来られました






「この様な状況の中お伝えしなくてはいけない事は心苦しいのですが、今後の医学の為にも旦那さんを病理解剖をさせて頂けませんか…」






「解剖は夕方には終わってご遺体をお返し出来ます。これは任意なのでご遺族の方が嫌なら断って頂いても結構です」






そう言われました







その時の私は






夫が亡くなった今、どんな死因だろうがもうどうでもいい






解剖して今更死因が判った所で、夫が息を吹き返す事も、また私に笑いながら冗談を言う事もないんだから…







肺血栓症という診断なのだから胸を切り開くんだろう







今綺麗なままの胸にも大きな傷をつけるなんて絶対嫌だ







夫は早く家に帰りたいはず






そう思って






「早く夫を連れて帰ってあげたいので、申し訳ありませんがお断りします」






そうお伝えしました






「わかりました」





そう言って先生はカンファレンスルームを後にされました






そして入れ替わりにカンファレンスルームに入って来たのは病院に出入りしている葬儀屋さんでした






「葬儀はどちらでされるかお決まりですか?」






「いえ、急な事だったのでまだ何も決まってはいません…」






その後、夫が亡くなってすぐでも悲しんでいられない葬儀社探しが始まります







葬儀屋さんから色々と聞かれていると、夫のエンゼルケアが終わったと言われて夫の元に案内されました







その場所は息子と夫が病院に通い出してから13年、初めて訪れる場所






地下の薄暗い通路を進んだ奥まった所にある霊安室でした






そこにはICUで繋がれていた挿管の管や沢山の点滴ラインが外された夫がいました






管は外されているけれど、どことなく苦しそうな顔でした





よく頑張ったね…







昨日の昼間私とお義母さんが病院から帰る時、早く帰りたいからって着いてきちゃったんでしょ…






あれだけダメだって言ったのに…






きっと魂はもう既に自宅の自分のベッドで疲れて寝てるんだろうね…






私がちゃんと身体を連れて帰ってあげるから待ってて







そう夫に約束をして、地下にある霊安室から出て1階のスマホの電波の届く場所に移動しました







そしてそこから混迷する葬儀社探しが始まります