ここは名も無い探偵事務所の1室。
だいたい、所長が全く人とのコミュニケーションが取れない男だからその暇さは想像出来るだろうと思う。
看板?
電話帳?
そんなものに名前が載ったことすら無い。
所長で有る悠木 聡の数少ない友人からの依頼がほとんど、で有る。
けれど何とか細々とでも、曲がりなりにも名刺に探偵、と打てるのは彼の腕だけは良いと言う事なのかもしれない。
基本、そこに居る人間―――――つまりは僕なんて所長専属のお茶くみ係でしか無いが、一応探偵助手、なんて思って貰えるのも所長のお陰、としておこう。
ガッチリとした全く贅肉の無い身体を窮屈そうなスーツに包み(だいぶ擦り切れてはいるが)、短髪に無精髭、そして煙草をくゆらす姿は実際カッコいい。
人間的なコミュニケーションは取れずとも、所長の周りには何故だか人が集まったりもするのはこの容姿のせいもあるのかもしれない。
それに、不器用だけど優しい所も有る。
だからこそ僕もこの暇な探偵事務所を辞める事が出来ないのだ。
全く、給料なんて本当の雀の涙、なのにで有る。
先にも書いたが、ここは全く名も無い探偵事務所。
そして僕はただの探偵助手だ。
お客さんが自分からここの・・・そうあの木製のドアをノックする事なんて無い、と思っていたんだ。
つまり、所長の友人以外の人がノックするなんてって事。
だけど、その日は突然やって来た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「所長」
「・・・・・・」
「コーヒー飲みますか」
木造のアパート・・・・最近お見かけする事も無いだろうこの菱木荘の外観、内装含めてまさしく昭和レトロと言える。
良く言えば、の話だ。
実際はギシギシと音を出すだけの床は底が抜けそうだし、雨漏りや隙間風何て言うのも普通に有る。
まあ、畳張りのアパートの1室では無く、一応事務所らしい内装なのが幸いかもしれない。
日当たりも全く悪いこの菱木荘の一番光が当たる窓際に、これまた木製の机に足を投げ出す男―――――
悠木 聡、この探偵事務所の所長で有る男が大きい身体をそっと動かした。貰う、と言う合図だ。
「口で言って下さいよ」
ブツブツ言いながらも電気ポットの水を確認しながらインスタントコーヒーのキャップを開けるのは、この事務所唯一の助手、笹倉 春道。
サラサラの茶髪は生まれつき彼の色素が薄いせいだ。
背も低く、色白な彼は女の子の様に紅い唇を尖らせながら手際良く聡好みの濃いブラックコーヒーを作ると、木製の机に置いた。
「ハル」
「・・・・・何ですかっ!ていうか急に喋らないで下さいよッ・・・ビックリしたなぁ」
実際、聡は無口過ぎるほどの無口で、全く話さない日もしばしばである。
そう言うときは春道―――――通称ハルが一方的に話して帰るのだ。
「・・・・・誰か来る」
「はぁ?」
そんなはずは無い。今日は数少ない聡の友人も来る予定は無いし、依頼はこの間犬を探して終わりだったはずだ。
しかも近所の小学生が飼ってる犬で、道端で泣いてる女の子の為に無償で行った仕事のみで有る。
「・・・・・・」
しかし聡はその足をゆっくりと下ろし、スーツの襟をほんの少し正した。
その仕草は優雅で滑らか。
聡の大きい身体からは想像できない位だ。
「階段登る靴音なんてしませんよ?気のせい―――――」
そう言い掛けたハルの声は木製のノックの音で途切れる事になってしまった。
――――――コツコツ
小さく響くその音は紛れもなくこの事務所のドアから聞こえる。
唖然とするハルに聡はゆっくりとした緩慢な動作でドアを指差すと、慌ててハルはドアに向かった。
ギシ――――ィ・・・・
「すみません、建付け悪くて・・・・・――――――ッ?!」
ゆっくりとハルがドアを開くと、また唖然とした顔でその場に止まってしまう。
それもそのはずだろう。
ドアの先にはハルが見た事も無い美女が佇んでいたのである。
お久しぶりです。ぺこり。
だいたい、所長が全く人とのコミュニケーションが取れない男だからその暇さは想像出来るだろうと思う。
看板?
電話帳?
そんなものに名前が載ったことすら無い。
所長で有る悠木 聡の数少ない友人からの依頼がほとんど、で有る。
けれど何とか細々とでも、曲がりなりにも名刺に探偵、と打てるのは彼の腕だけは良いと言う事なのかもしれない。
基本、そこに居る人間―――――つまりは僕なんて所長専属のお茶くみ係でしか無いが、一応探偵助手、なんて思って貰えるのも所長のお陰、としておこう。
ガッチリとした全く贅肉の無い身体を窮屈そうなスーツに包み(だいぶ擦り切れてはいるが)、短髪に無精髭、そして煙草をくゆらす姿は実際カッコいい。
人間的なコミュニケーションは取れずとも、所長の周りには何故だか人が集まったりもするのはこの容姿のせいもあるのかもしれない。
それに、不器用だけど優しい所も有る。
だからこそ僕もこの暇な探偵事務所を辞める事が出来ないのだ。
全く、給料なんて本当の雀の涙、なのにで有る。
先にも書いたが、ここは全く名も無い探偵事務所。
そして僕はただの探偵助手だ。
お客さんが自分からここの・・・そうあの木製のドアをノックする事なんて無い、と思っていたんだ。
つまり、所長の友人以外の人がノックするなんてって事。
だけど、その日は突然やって来た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「所長」
「・・・・・・」
「コーヒー飲みますか」
木造のアパート・・・・最近お見かけする事も無いだろうこの菱木荘の外観、内装含めてまさしく昭和レトロと言える。
良く言えば、の話だ。
実際はギシギシと音を出すだけの床は底が抜けそうだし、雨漏りや隙間風何て言うのも普通に有る。
まあ、畳張りのアパートの1室では無く、一応事務所らしい内装なのが幸いかもしれない。
日当たりも全く悪いこの菱木荘の一番光が当たる窓際に、これまた木製の机に足を投げ出す男―――――
悠木 聡、この探偵事務所の所長で有る男が大きい身体をそっと動かした。貰う、と言う合図だ。
「口で言って下さいよ」
ブツブツ言いながらも電気ポットの水を確認しながらインスタントコーヒーのキャップを開けるのは、この事務所唯一の助手、笹倉 春道。
サラサラの茶髪は生まれつき彼の色素が薄いせいだ。
背も低く、色白な彼は女の子の様に紅い唇を尖らせながら手際良く聡好みの濃いブラックコーヒーを作ると、木製の机に置いた。
「ハル」
「・・・・・何ですかっ!ていうか急に喋らないで下さいよッ・・・ビックリしたなぁ」
実際、聡は無口過ぎるほどの無口で、全く話さない日もしばしばである。
そう言うときは春道―――――通称ハルが一方的に話して帰るのだ。
「・・・・・誰か来る」
「はぁ?」
そんなはずは無い。今日は数少ない聡の友人も来る予定は無いし、依頼はこの間犬を探して終わりだったはずだ。
しかも近所の小学生が飼ってる犬で、道端で泣いてる女の子の為に無償で行った仕事のみで有る。
「・・・・・・」
しかし聡はその足をゆっくりと下ろし、スーツの襟をほんの少し正した。
その仕草は優雅で滑らか。
聡の大きい身体からは想像できない位だ。
「階段登る靴音なんてしませんよ?気のせい―――――」
そう言い掛けたハルの声は木製のノックの音で途切れる事になってしまった。
――――――コツコツ
小さく響くその音は紛れもなくこの事務所のドアから聞こえる。
唖然とするハルに聡はゆっくりとした緩慢な動作でドアを指差すと、慌ててハルはドアに向かった。
ギシ――――ィ・・・・
「すみません、建付け悪くて・・・・・――――――ッ?!」
ゆっくりとハルがドアを開くと、また唖然とした顔でその場に止まってしまう。
それもそのはずだろう。
ドアの先にはハルが見た事も無い美女が佇んでいたのである。
お久しぶりです。ぺこり。