綾迦と青藍の話はまるで夢の中の話のようにしか感じられなかった。
そうだ、言ってみれば自分が本当に人間じゃ無いとか、全部夢の中の出来事なのかもしれない。
燦さまが、私を庇って・・・・
そしてそれを私自身が忘れようとしたなんて・・・・・。

今の私には信じたく無い事ばかり。
流迦は2人の話から逃れる様に立ち上がると学校へ向かうべく、部屋を出た。

目の前には、喧噪にまみれた都会のビルが立ち並ぶ。
高層マンションの1室だったらしい。

埃にまみれた空気。
自然も作られたものばかり。

しかし流迦にはこちらの方が現実としか思えなかった。

夢の中のあの自然に囲まれた宮。
何もかもが煌めいて、そしてそこには愛しい人たちがいっぱいだった。

だけど―――――――

「おい、流迦」
部屋から見える風景を黙り込んで見ていた流迦に、玄関を開け、青藍がぶっきらぼうに声を掛けた。

ハッと気付いて青藍を見ると、小さな袋を流迦に渡す。
まだ暖かいその包みを受け取ると、青藍は溜め息交じりに呟いた。

「弁当。お前の今の疑似両親には昨日術を掛けておいた。今日こちらに帰って来るか、それとも向こうに帰るか、それはお前が決めろ。お前の携帯に俺の番号入れといたから、連絡は絶やすな」

――――――どこまで用意周到なの。

しかし、流迦は黙ってその言葉に頷いた。
何も分からない今、従うしか無い。

「それと――――――お前の記憶だいぶ戻っているんだからな。何が有っても驚くなよ」

どう言う意味?と問い掛けようと流迦が口を開き掛けると、青藍はさっさとドアを閉めてしまった。

バタン、と無常に響くその音にカチンとしながら、流迦はエレベーターに向かった。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


驚くな、と言った青藍の言葉の意味が解るのに、時間はそう掛からなかった。
学校へと向かうその街の中でも、流迦は懐かしい面々と何度もすれ違ったのだ。

風霊や、緑精、花精・・・光霊、水霊。

何とも幻想的な姿で戯れている。

今まで見えなかったのが不思議なくらいだ。
それほどに彼らの陽炎の様な姿はハッキリと見える。


――――――――・・・・・・燦さま

小さく、囁くように流迦は呟く。
どうして記憶を無くして、こちらに来たのか。
私、大切なことを思い出せて無いのね・・・・・・・・。

燦さまは人間になってしまっている事は解った。
そしてこちらに来ていると言う事も。

風華祭の日に何が有ったのか。
何とかそれを思い出さなくてはならない。

流迦は目の前の精霊たちに留めていた視線を上げると、ゆっくりと歩き出した。






流迦ちゃん、頑張れ~(笑)