コポコポ・・・・

コーヒーの良い匂いがルカの鼻孔をくすぐる。
・・・・・まだ、もうちょっと。
ベッドの中のぬるま湯の暖かさを離してなるものか、とルカは大きくシーツを胸に抱き込んだ。

まだアラームも鳴って無い。
遅刻の心配も無いもの・・・・・

うつらうつらと夢の中を彷徨いながら、しかし、ルカは大きく飛び起きた。
そしてグルリと周囲を見渡すと、ベッドからそう遠く無いドアにもたれかかる人を見つめた。

同じ様にこちらを微笑みながら見つめているその人は、裸体に男物のシャツを羽織り、片手にコーヒーカップを持っている。

「起きたか」
「私・・・・・」
「良い夢は見れたか?」

夢。
そうだ、凄く懐かしい夢を見て・・・・・
夢なの?

怪訝そうに自分を見るルカににんまりと口の端を上げると、コーヒーカップを差し出す。

「青藍は家事も得意だ。コチラに来てから電化製品にも慣れた」
「せい、らん」
「まだ思い出したらんか?」
「私」

ルカは混乱する頭の中を整理しようと頭を振った。

「あれは・・・・あの日・・・・・」
「うん」

くしゃりとルカの髪を撫でる、その手。
このぬくもり。

「おか、あさま」

ルカは胸の中に拡がる熱いものに急き立てられるかのように、母――――――綾迦に縋り付いた。
そのルカの背中を優しく綾迦は撫でてくれる。

「思い出したか」

コクコク、と何度も頷く娘に、綾迦はほ、と息を吐いた。

「お母さま、一体、どうして、私・・・・」
「うむ。そこだ」
「私、灼鳴さまがお怪我をされたところまでしか思い出せなかったのです、それから何故―――――」

さめざめと泣くルカの背を撫でながら、綾迦はよしよしと声を掛けた。

「大丈夫だ。いずれ、必ず記憶も戻るだろう」
「おか、あさま」
「お前にはやるべき事が有るのだ」
「何を・・・・・?何をするのですか」

泣き顔を上げながらルカが小さく呟くと、綾迦はまたも溜め息を吐く。

「探すんだ、燦を」
「探す・・・・・・?燦さまはどこに居るのですか」

不意に出た愛しい名前。だが何故か解らない不安にルカは涙を堪えながら問い掛けた。

「まだ、記憶が戻って無いからな・・・・・流迦、落ち着いて聞くのだよ」
チッ、と舌打ちをしながら、綾迦は言葉を選ぼうと瞳を宙に浮かばせる。

「お母さま」
「流迦。燦はお前を庇ったんだ」





ッて事で現代にモドル。