◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇Far expectation 13


朔の悲痛な声を聞きながら、美颯は静かに瞳を閉じた。

―――――朔。

こうやって抱き締められていると、何故こんなに心穏やかなのか。

朔の為に何かしたい、と言う気持ちが大きくなる反面、朔の望むとおりにしたい、と言う気持ちが込み上げてくる。


―――――朔と、一緒に・・・・。

朔と共に旅を・・・・。綾迦やその幼馴染達と共に行ければ。


いけない。私が行けば必ず足手まといになるのだ。

小さく朔の胸の中で首を振り、美颯はその温かい胸を押し退けた。


「美颯・・・・行かせないよ、君を」

「朔」

「僕と一緒に来てくれないのなら、今すぐ風王さまに会って君の話をする。そして君を閉じ込めてでも―――――絶対に無月の所へは行かせない」

そう、君をどこかへ閉じ込めてでも、絶対に行かせない。

朔は押し退けられた腕を掴み、美颯を自身の方へ引き寄せた。

「朔・・・・・・解った、解ったから・・・・離して」

「――――――本当に、解ってくれたのか」

「ああ、解った。良く考えたら、確かに無謀な話かもしれん・・・・だから、離して」

「今、――――――この腕を離すまで君はそうやって嘘を付くんだろうな」

静かにそう告げる朔の声に、美颯はハッと顔を上げる。と、朔の今にも泣き出しそうな顔が視界に飛び込んで来た。


「この場を、乗り切れればそれで良いとか思ってる?」

「違う、そんな」

焦った様に首を振る美颯の身体を朔は軽々と抱き抱えると、その場に立ち上がる。

「美颯。君が簡単に言うことを聞くなんて思って無い。――――――風王さまにすぐお会いして君を止めて貰うよ」

「朔、お願い、降ろして」

いやいやと首を振る美颯の身体をしっかりと抱き締めると、朔は器用に片手を上げ、目の前に黒いヴェールを作り出して行く。

「朔、嫌ッ・・・・」

「駄目だ」

美颯の悲痛な声を切り捨てながら、朔は小さく答えると、しばらく逡巡し、美颯を見つめた。

「美颯。僕を信じてくれ。僕は明日には討伐の旅に出る。―――――勿論君の妹姫も一緒に。だから―――――僕が帰って来るまで、待っていてくれないか」

いきなり優しく響く声に、美颯は抵抗する力を緩め、朔を見つめ、やや合って視線を外した。

「待つ・・・・・・?」

「僕を信じて欲しい。必ず、今のこの状況を変えてみせる。―――――忠義な精霊の件は至急手配しよう。必ず、助け出してみせる。約束する」

「朔」

「僕を、信じて」

――――――君が待っていてくれるなら。

朔は胸の中に芽生えた小さな暖かみの意味を解らないまま、美颯の身体の体温を感じ続けた。




ふぅ・・・・・。

バトンリターンで慌てて書いちゃいました(笑)