鴻と緋冴が楽しそうに笑い合うのを燦はビクビクしながら見つめていた。
それもそのはず、だ。

横に居る涼から流れ出る冷たい冷気。
いや、実際には出てはいないが、その位の表現でも良いだろう。

「おい、すず・・・・」

燦が声を掛けると同時に、涼はガサガサとその辺りの草むらをかき分け、緋冴と鴻が談笑する場所まで歩いて行く。

―――――――姫の馬鹿ッ!

そう言いたいのを堪え、満面の笑みで緋冴の正面に立つ。
鴻は流石に双子だ。涼の静かな怒りをひしひしと感じているのか、表情は固い。

「王子」
ホッとした表情で緋冴がはにかむと、その仕草に思わず顔が綻ぶ。

――――――違うッ!

「姫、―――――まだ怒ってる?本当にごめんね」
「ああ、いや・・・・それはもう良い。鴻と話してたらそんな事忘れてた」

ピクリ。涼の眉が一瞬動く。
その横で追い付いた燦と鴻の表情が涼の表情に固まった。

「鴻?」
「ああ、名前で呼ぶ事を許して貰ったのだ」
にこやかに微笑みながら涼に告げる緋冴の顔はとても嬉しそうに見える。
燦と鴻はその緋冴に瞳で訴えるが、緋冴は相も変わらずにこやかに首を傾げるばかり。

こんの、馬鹿姉上ッ!
燦が何とかこの場を切り抜けようと意を決して言葉を掛けようとすると、緋冴が頬を赤らめながら、涼を下から見上げた。

「だから、そう――――――王子の事も名前で呼んでも、良いか?」
「え・・・・・・」
緋冴の意外な申し出に、涼はたじろいだ。

名前で呼んでも、良いか?確かにそう言った・・・・。
涼がじっと緋冴を見つめ返すと、相も変わらず緋冴は優しい眼差しで涼を見ている。

―――――姫。

ドキドキと、鼓動が跳ね上がって行くのが解る。
何でこんなに姫は簡単に僕の気持ちをかき乱して行くんだろう・・・・。

「あ―――――――俺、ちょっと用事思い出した」
「俺も」

わざとらしい声が背中から聞こえる。
いや、そんな事わざわざ言わなくても良いから早く行け。
涼が背中に回した手をちょっと振ると、ガサガサという音をさせながら燦と鴻がその場を離れて行く。
やがてその音が聞こえなくなるまで、涼と緋冴はただ、見つめ合い続けていた。


ハイッ!
久々ですな(笑)
温泉へ行こうも佳境です←