青藍の尤もらしい意見と説教を聞きながら、蒼迦は緋冴と咲良・・・・今もまだ眠っているだろう彼女の部屋を注意深く静かに叩いた。
中から聞き慣れた緋冴の声が返って来ると静かに扉を開け、中に入る。
寝台の上に横たわる咲良の傍らには緋冴が座っている椅子から立ち上がり、蒼迦を出迎える。
「遅かったな」
「いや、その・・・・済まん」
「いや、構わんが――――――何だ、青藍も一緒だったのか」
緋冴が蒼迦の肩先の青藍に声を掛けると、青藍はその小さい頭を小さく傾げる。
「歌姫の容態は」
「うむ・・・・もう心配は無いとは言え、な。ここに咲良だけを残して置くのは少々不安でな」
「―――――そう、だな」
「何だ、覇気の無い」
蒼迦の浮かない顔に緋冴が眉を顰めると、青藍のわざとらしい溜め息が蒼迦の顔の横で聞こえて来る。
「何だ、青藍」
『全く―――――――蒼迦さまにも困ったものです!』
青藍がそう口を開くと、そのまま先程の様子を事細かに緋冴に話して聞かせた。
蒼迦は相も変わらず口を閉ざしたまま、自身の傷を再び抉られる羽目に陥った訳で有る。
やがて青藍の話が終わると、緋冴もまた大げさに溜め息を吐く。
「蒼迦・・・・」
「解っている。頼むから今は言うな・・・・・青藍に言われ続けて来たところなんだぞ」
察してくれよ、とばかりに蒼迦は緋冴を恨めしそうに見るが、緋冴は首を振ってまた溜め息を吐いた。
「蒼迦、もういい加減に流迦を1人前の女としてみてやれ。いつまで子ども扱いするんだ。それに燦は―――――そんなに悪い奴では無いぞ」
「解ってるさ!緋冴、俺は・・・・・流迦を子供扱いなんてしていない!流迦はもう1人前の立派な女性だ」
「――――――蒼迦」
「緋冴。俺は―――――――流迦を愛しているんだ」
苦しそうに緋冴にそう告げる蒼迦の言葉を、咲良は寝台の上で静かに聞き入っていた。
蒼迦の気配で目を覚ましたのだが、自分が知らないところでの話―――――青藍の話をつい聞き入って居た為に声を掛けられなかったのだ。
―――――流迦を愛してるんだ。
解っていた事とは言え、やはり愛する蒼迦の口から聞くと、咲良の胸に何かが突き刺さった様に感じる。
―――――蒼迦さま
ピッタリと閉じている筈なのに眼が熱くなって来るのが解る。
泣いては、ダメ。
咲良は必死で気付かれぬ様に唇を強く噛み締める。じんわりと浮かぶこの涙をどう止めれば良いのか・・・・。
突き刺さったこの痛みはなかなか抜けそうに無い。
「蒼迦、流迦を愛している事は、皆百も承知だ。酷な様だが・・・・・流迦がお前では無い、我が弟を選んだ事も、だ」
「―――――・・・・」
「下世話な話だが・・・・お前ほどの器量なら、他のどんな美姫でも靡くだろう。他に目を向けてみろ」
そう言いながら、緋冴の胸は思いの外粟立って居た。
蒼迦は大事な幼馴染だ。実際、こんな事は言いたくは無い。
だが、恋愛経験の全く無い緋冴にはこんな時にどの様に慰めて良いのかも解らないままだった。
燦は掛け替えのない大事な弟。そしてその燦を愛する流迦。
流迦は1人しか居ないのだ。
どうしてやる事も出来ない。
――――――蒼迦・・・・頼む、乗り切ってくれ・・・
祈る様な気持ちで緋冴は蒼迦の言葉を待ち続けた。
そう、そして咲良もまた、緋冴の言葉に対する言葉を待ち続けていた。
蒼迦、強く生きろ・・・ッ!
中から聞き慣れた緋冴の声が返って来ると静かに扉を開け、中に入る。
寝台の上に横たわる咲良の傍らには緋冴が座っている椅子から立ち上がり、蒼迦を出迎える。
「遅かったな」
「いや、その・・・・済まん」
「いや、構わんが――――――何だ、青藍も一緒だったのか」
緋冴が蒼迦の肩先の青藍に声を掛けると、青藍はその小さい頭を小さく傾げる。
「歌姫の容態は」
「うむ・・・・もう心配は無いとは言え、な。ここに咲良だけを残して置くのは少々不安でな」
「―――――そう、だな」
「何だ、覇気の無い」
蒼迦の浮かない顔に緋冴が眉を顰めると、青藍のわざとらしい溜め息が蒼迦の顔の横で聞こえて来る。
「何だ、青藍」
『全く―――――――蒼迦さまにも困ったものです!』
青藍がそう口を開くと、そのまま先程の様子を事細かに緋冴に話して聞かせた。
蒼迦は相も変わらず口を閉ざしたまま、自身の傷を再び抉られる羽目に陥った訳で有る。
やがて青藍の話が終わると、緋冴もまた大げさに溜め息を吐く。
「蒼迦・・・・」
「解っている。頼むから今は言うな・・・・・青藍に言われ続けて来たところなんだぞ」
察してくれよ、とばかりに蒼迦は緋冴を恨めしそうに見るが、緋冴は首を振ってまた溜め息を吐いた。
「蒼迦、もういい加減に流迦を1人前の女としてみてやれ。いつまで子ども扱いするんだ。それに燦は―――――そんなに悪い奴では無いぞ」
「解ってるさ!緋冴、俺は・・・・・流迦を子供扱いなんてしていない!流迦はもう1人前の立派な女性だ」
「――――――蒼迦」
「緋冴。俺は―――――――流迦を愛しているんだ」
苦しそうに緋冴にそう告げる蒼迦の言葉を、咲良は寝台の上で静かに聞き入っていた。
蒼迦の気配で目を覚ましたのだが、自分が知らないところでの話―――――青藍の話をつい聞き入って居た為に声を掛けられなかったのだ。
―――――流迦を愛してるんだ。
解っていた事とは言え、やはり愛する蒼迦の口から聞くと、咲良の胸に何かが突き刺さった様に感じる。
―――――蒼迦さま
ピッタリと閉じている筈なのに眼が熱くなって来るのが解る。
泣いては、ダメ。
咲良は必死で気付かれぬ様に唇を強く噛み締める。じんわりと浮かぶこの涙をどう止めれば良いのか・・・・。
突き刺さったこの痛みはなかなか抜けそうに無い。
「蒼迦、流迦を愛している事は、皆百も承知だ。酷な様だが・・・・・流迦がお前では無い、我が弟を選んだ事も、だ」
「―――――・・・・」
「下世話な話だが・・・・お前ほどの器量なら、他のどんな美姫でも靡くだろう。他に目を向けてみろ」
そう言いながら、緋冴の胸は思いの外粟立って居た。
蒼迦は大事な幼馴染だ。実際、こんな事は言いたくは無い。
だが、恋愛経験の全く無い緋冴にはこんな時にどの様に慰めて良いのかも解らないままだった。
燦は掛け替えのない大事な弟。そしてその燦を愛する流迦。
流迦は1人しか居ないのだ。
どうしてやる事も出来ない。
――――――蒼迦・・・・頼む、乗り切ってくれ・・・
祈る様な気持ちで緋冴は蒼迦の言葉を待ち続けた。
そう、そして咲良もまた、緋冴の言葉に対する言葉を待ち続けていた。
蒼迦、強く生きろ・・・ッ!