もがく朧の身体が諦めたかのように落ち着くと、龍迦はその柔らかい体を離し、先ほど落としてしまったので有ろう神酒の杯に気付いた。
―――――気付かなかったのか
身を屈ませその杯を拾い上げ、ふと見ると朧の瞳に涙が浮かんでいるのを認めた。
「わ、私は闇王なのよ、お父さまが死んで・・・・闇王になるのは私なのよ」
「そうですね、確かに貴方は順当に行けばそうなるのでしょうね」
「順当、ですって」
「先代の王に、他に本当に御子さまがいらっしゃらなければ」
龍迦の言葉は大した意味合いは全く無かった。ただ、朧との会話を引き延ばそう、と思わず出た当り前の事を言葉にしただけだった。
だが、当の朧は涙を浮かべながら龍迦を呆然と見つめている。
「知って、いるのね」
「――――――は?」
何を?と龍迦が問い掛けようと言葉を出そうとすると、朧は頭を抱えながらその場に崩れ落ちた。
「闇姫さま?」
「―――――――殺さなきゃ。殺さなきゃ・・・・・」
朧は泣きながら何度も小さく呟いた。
「闇姫さま、しっかりなさい!」
「あの子を殺さなきゃ、私が殺される」
何を――――――龍迦が朧の身体に触れると、朧は堰を切ったように龍迦の胸に抱き付き、そして泣き出した。
「殺される・・・・・殺されるわ・・・・お父さまの様にッ―――――」
うわ言の様に呟き続ける朧に驚きながら、龍迦は静かにまた朧の身体を抱いた。
その華奢な背中にしっかりと手を回し、さすってやると、朧は尚も泣き続けた。
「お父さま、お父さま―――――――私の、せいで」
「どうして、こんな事に」
「小父さま・・・・・棗小父さま・・・・・」
泣きながら何かを訴え掛ける朧の言葉を、龍迦は静かに聞き続けた。
その肩や背中を何度もさすり、時には頭を撫でながら。
やがて、朧の言葉が無くなり、部屋に朧のすすり泣きだけが聞こえる様になると、龍迦は朧を抱き抱え、寝台へ朧を下した。
そのまま優しく抱き締め続けていると、やがてポツリ、と朧が話し掛けた。
「取り乱してしま、ったわ・・・・ごめんなさい」
「いいえ」
「――――――知っていたのですね、王子・・・・父に他に子がいる事を」
□□□□□
長い廊下に感じる。
実際にはそんなに距離は無いはずなのに余りにも長く感じるのは、やはり、この肩先に留まり、先ほどから何度もお怒りの言葉を投げ続ける霊鳥のせいだろう。
蒼迦は辟易しながら、この霊鳥――――――青藍の説教を受け続けていた。
ブツブツ、と嫌味ったらしいものでは無い。全くの正論を青藍は何度も言い聞かせて来る。
―――――――解ってる
青藍の言う事は最もだ。それは解ってる。
だが、どうしても流迦と燦の事になると自分を止める事が出来ない。
―――――――あんな若造に
自分の愛しい妹を横からかっさわられた。
結婚の申し込みにあの日兄上と出た日・・・・・
何故流迦も連れて行かなかったのだろう。
そうしたら今とは全然違った状況だったかもしれない・・・・・・。
『蒼迦さま、聞いておられるのですかッ』
そう、青藍のこんな怒りを受けずとも良かったかもしれない。
―――――気付かなかったのか
身を屈ませその杯を拾い上げ、ふと見ると朧の瞳に涙が浮かんでいるのを認めた。
「わ、私は闇王なのよ、お父さまが死んで・・・・闇王になるのは私なのよ」
「そうですね、確かに貴方は順当に行けばそうなるのでしょうね」
「順当、ですって」
「先代の王に、他に本当に御子さまがいらっしゃらなければ」
龍迦の言葉は大した意味合いは全く無かった。ただ、朧との会話を引き延ばそう、と思わず出た当り前の事を言葉にしただけだった。
だが、当の朧は涙を浮かべながら龍迦を呆然と見つめている。
「知って、いるのね」
「――――――は?」
何を?と龍迦が問い掛けようと言葉を出そうとすると、朧は頭を抱えながらその場に崩れ落ちた。
「闇姫さま?」
「―――――――殺さなきゃ。殺さなきゃ・・・・・」
朧は泣きながら何度も小さく呟いた。
「闇姫さま、しっかりなさい!」
「あの子を殺さなきゃ、私が殺される」
何を――――――龍迦が朧の身体に触れると、朧は堰を切ったように龍迦の胸に抱き付き、そして泣き出した。
「殺される・・・・・殺されるわ・・・・お父さまの様にッ―――――」
うわ言の様に呟き続ける朧に驚きながら、龍迦は静かにまた朧の身体を抱いた。
その華奢な背中にしっかりと手を回し、さすってやると、朧は尚も泣き続けた。
「お父さま、お父さま―――――――私の、せいで」
「どうして、こんな事に」
「小父さま・・・・・棗小父さま・・・・・」
泣きながら何かを訴え掛ける朧の言葉を、龍迦は静かに聞き続けた。
その肩や背中を何度もさすり、時には頭を撫でながら。
やがて、朧の言葉が無くなり、部屋に朧のすすり泣きだけが聞こえる様になると、龍迦は朧を抱き抱え、寝台へ朧を下した。
そのまま優しく抱き締め続けていると、やがてポツリ、と朧が話し掛けた。
「取り乱してしま、ったわ・・・・ごめんなさい」
「いいえ」
「――――――知っていたのですね、王子・・・・父に他に子がいる事を」
□□□□□
長い廊下に感じる。
実際にはそんなに距離は無いはずなのに余りにも長く感じるのは、やはり、この肩先に留まり、先ほどから何度もお怒りの言葉を投げ続ける霊鳥のせいだろう。
蒼迦は辟易しながら、この霊鳥――――――青藍の説教を受け続けていた。
ブツブツ、と嫌味ったらしいものでは無い。全くの正論を青藍は何度も言い聞かせて来る。
―――――――解ってる
青藍の言う事は最もだ。それは解ってる。
だが、どうしても流迦と燦の事になると自分を止める事が出来ない。
―――――――あんな若造に
自分の愛しい妹を横からかっさわられた。
結婚の申し込みにあの日兄上と出た日・・・・・
何故流迦も連れて行かなかったのだろう。
そうしたら今とは全然違った状況だったかもしれない・・・・・・。
『蒼迦さま、聞いておられるのですかッ』
そう、青藍のこんな怒りを受けずとも良かったかもしれない。