「こんな素晴らしいものを戴く訳には・・・ッ」
「そうです、父上からも仰って下さいッ」
慌てながらお互いの手の中にしっくりと収まる竪琴を抱きながら、涼と鴻は父である涬に助けを求めるように叫んだ。
しかし、その様子を王たちは嬉しそうに眺めたままだ。
「いやぁ、しかしここまでとはな」
「うむ。だいたい竪琴なんぞ、ついぞ見てないぞ」
「これで風華祭の演奏者は決まったも同然」
「流石、我が息子」
――――――ん?風華祭?
涼と鴻が訝しげに顔を上げると、王たちはにんまりと微笑みを向ける。
「父上、今、聞き間違えでは無ければ風華祭、と・・・」
「ああ、言った」
「演奏者、と聞こえましたが」
「それも言った」
涼と鴻がお互いに顔を見合わせると、煌が興奮を隠せない、とばかりに話し出した。
「この花に選ばれ、しかも楽器が出てくるなどそうそう無い事だ。しかも何と言う偶然!稀代の歌姫と舞姫の風華祭の前に丁度出てくるとは――――――これは偶然では無く必然!そうだろう、水の王子。きっと素晴らしい演奏だろう。歌に舞に楽・・・3つも揃うとは!」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
「そんな、いきなり―――――」
いやいや、と首を振りながら涼と鴻は非難の瞳を涬に向けた。
「ま、確かにいきなりだが・・・・・しかしこれは良い機会では無かろうか、とも思うぞ。涼、鴻・・・・風華祭の演奏者はその時随一の楽奏者となるのが決まり。しかも華の一族のこの花に選ばれるとは、誰も文句の付けようも無いだろう。それにその竪琴には先ほど煌も言ったが力が有る。それを試すのにも良い機会だとは思えんか?」
「父上――――――上手く言ってるつもりでしょうが、誤魔化されませんよ」
「上手く言ってなどおらんぞ。だいたい、竪琴が出るなどと、誰が予見できたのだ?」
涬の切り返しに、涼はぐ、と言葉を詰まらせると、わざとらしく溜め息を付く。
「それに、満那と深那が居なくなってから一度も楽を奏でていないでは無いか」
涬のふとした言葉だったのだろうが、涼と鴻は息を大きく飲んだ。
確かに、涼と鴻は楽器を奏でるのが巧かった。しかしそれは母に手習い、姉に聴かせる為だけのもので、実際にはそれがどれほどの腕かも解らない。
姉は涼と鴻の楽に合わせて剣舞を舞ったり、それは楽しそうに雨を降らせたりしていただけだ。
―――――姉上
「水の王子よ。涬はまたお前たちの演奏を聴きたいのだ・・・・それは親心でも有ると思う。それに、私たちもお前たちの澄んだ音色を聴きたい」
「おう、そうだそうだ。きっと緋冴や灼鳴も喜ぶ!」
ピクリ、と涼の美しい眉が上がった。
綾迦の言葉に心動かされたのも有る。しかし、焔の言葉が絶大な力で涼の心を縛り付けたのだ。
「おい、涼、お前・・・まさか」
「五月蠅い、鴻。―――――では慎んで」
涼はゆっくりと頭を下げると、手の中に収まる竪琴を愛おしそうに抱き締めた。


やっぱりそっちか、涼(笑)