周りは人間たちが忙しなく歩き、時には隣の誰かと談笑したり、窓を指し示したり、実に楽しそうに見える。
儚い命の煌めきを大事にしているのだろうな、等と思いながら、その煌めきを1つ1つつい見つめてしまう。
と、眼前の少女に目が留まった。
長い髪をふわりとはためかせながら悠々と少女は歩いている。
少女、と言う表現ではおかしいか・・・・真っ直ぐに伸びた背筋を綺麗だな、と感じてしまったのだ。
もしかしたら、流迦の姿かたちよりも大人びているのかもしれない・・・。
何故か、蒼迦はそのまま少女の後に続いて歩いて行った。
彼女の歩く道を同じ様に真っ直ぐに歩き、同じ様に人波を避け、同じ様になぞらえて歩いてみる。
存外に楽しい。
そう言えば、最近楽しい、等とは久しく感じていなかった感情だ。
彼女が曲がれば蒼迦も道を変える。そうしていると彼女が店の中に入って行ってしまった。
あ、と思った時には彼女はするりと店の中。
別段、声を掛けようと思った訳でも無い。ただ何となく寂しい様な気持ちにもなった。
――――――不思議な事も有るものだ。
人間にそこまで気を留めるなど・・・・青藍が見たらまた説教されるかもしれない。あの霊鳥の長過ぎる説教を思い出すと、蒼迦は知らず身を震わせた。
そうして窓の外から、そっと中を覗いてみると、中には数人の人が座ったり、立ったりしている。
髪を何か布で巻いたり、濡れていたりもするようだ。
座っている人にまるで女官の様に1人が付き添い髪を触っている。
――――――ふむ。都合が良い。
蒼迦は心の中で呟くと、彼女が入って行った店の扉を開けた。
中には優しい雰囲気が溢れ、色取り取りの花が咲き乱れている。
切り花だと言うのに生気に溢れ、蒼迦以外には見えないだろうが、花精が舞い踊りながら蒼迦の気に惹きつけられたかの様に一斉にこちらを向く。
『――――まぁ、これは』
『風の王子さま』
口々に恭しく頭を垂れる花精に微笑みながら目配せを送ると、花精たちは静かにまた舞い始めた。
―――――しかし、切り花でもこんなに生気に溢れているとは・・・
「いらっしゃいませ」
蒼迦が店内を見渡していると、優しい声音が蒼迦に降り注いだ。



風華月談