「ごめん」と小さく呟いた燦の意図が解らず、流迦は焦った様に燦の後を追おうとして、涼の腕によって制された。
思わず非難めいた瞳を涼に走らすと、涼はふるふると首を振る。
「今は止めておくべきだ」
「どうして、どうしてなのですか」
「燦の気持ち、解ってあげなきゃ・・・・ね?」
燦さまの気持ち?
―――――――だって、私、ちゃんと・・・・
「僕が言うのはあまり良くないから、落ち着いたら燦とゆっくり話せば良い。だから今はそっとしておくんだ」
「そんな、どうして・・・・・」
泣きそうな顔で涼に詰め寄る流迦に涼は困った表情を浮かべると、傍にいた片割れに助けを求める様に視線を走らせた。
だが、鴻も困った表情で流迦を見つめるだけだ。
―――――――使えない。
そう心の中で悪態をつくと、涼は溜め息をつきながら、もう1人、傍らに居る美しい女性を見つめた。
・・・・・・これが。風王、綾迦。
やっと間近で見る美貌の女王は涼の瞳を真っ直ぐに見つめ返している。
灼鳴の事が有って挨拶すらまだだった女王に多少なりと威圧感を感じるのは彼女の見えない力なのだろうか。
その妖艶さ、その美しさは他に類を見ない。
一挙一動が洗練され尽くしている。何もかもが、―――――――美し過ぎる・・・・
ほう、と思わず感嘆の息が漏れそうだ。
父がこっ酷く振られた、と言う話が嘘では無いのだ、と改めて感じると、涼は見つめ過ぎていた自分に思わず頬を赤くした。
「ま、そう固くなるな、王子たち」
涼の羞恥に染まった顔を可笑しそうに見つめながら綾迦は涼と鴻の傍らまで近付くと、その美貌の顔を涼に間近に近付け、そして軽く頬に口付けた。
更に真っ赤になる涼を楽しげに笑うと、後ずさり、首を振る鴻の頬にも同様に口付けを落とした。
美しい双子の王子の真っ赤な顔に満足気に綾迦は頷くと、しみじみと双子の王子の顔を感慨深く見つめる。
「満那と深那に良く似ている・・・・・・水の愛し子の弟たち、私は風王綾迦。流迦が世話になったようだな。そして燦たちも。他の王に代わって礼を言おう。―――――良き友に恵まれたものだ、燦は」
にっこりと笑う綾迦の姿に思わず涼と鴻は羞恥に染まった頬を携えながらも膝を折った。
「「偉大なる王、風王さま―――――」」
「うむ」
「水の一族、涼でございます」「同じく、鴻でございます」
2人は揃って綾迦に名前を告げると、そのまま深く頭を下げた。
「堅苦しいのは実はあまり好きでは無い。だが、水の王子たち、お前たちだけは別だ。・・・・流石は涬の息子。見目麗しく、清廉な水の王子たちよ。咲良や灼鳴が助かったのはお前たちのお陰でも有る。いずれ焔や煌からも褒美が有るだろうが・・・・・王子たち、友人を・・・・そして娘の大事な幼馴染を救ってくれた礼がしたい。私に与えられるものならば何でも好きなものを言うが良い」
綾迦はそう言うと、優しい風で2人を取り巻いた。
「「友人なれば当り前のことをしたまで。そのお言葉だけで充分でございます」」
温かみのある風を一身に受けながら、涼と鴻は声を揃えた。
流石は双子、なのだろうか。対の存在で有る2人は同じ顔で有りながら纏う雰囲気は両極端。
なのに言葉を発する時はお互いの言葉が解るのか一言一句違える事すら無い。
「そうか。ならば勝手に贈ることにしよう」
綾迦はそう言うと両手を差し出した。
右手、左手、両方の掌に風が円となって集まり、そして凝縮されて行く。
やがて1つの玉となったその風の塊を掌に握り締めると、キラリ、と光が零れて見えた。
綾迦はおもむろに双子の顔の前に両手を差し出す綾迦の掌に乗るのは、輝きに満ちた両耳に付けるので有ろう対の装身具。
2人の瞳の色に合わせたのか、1つはアイスブルー、1つは黒曜石の輝きを放っている。
「本当は風霊を授けてやりたいのだが・・・・お前たちは満那と深那が居ない以上、水霊を多く持たなくてはいけないだろうからな。ま、力がもっと付いたらその時にやろう。これは風の小箱の様なものだ。お前たちくらいなら数時間は飛べるだけの風の力が込められている。使い方を工夫すれば色々使えるぞ・・・・・例えば好きな女と2人きりで空中散歩、とかな」
シャラリ、と綾迦はそれぞれを涼と鴻の掌に握らせると、片目を瞑って見せた。






おか―様、やっぱり最強。