◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇Far expectation 12
「朔、綾迦を連れて行くことに悩んでいるのだろう」
美颯は朔に抱き締められながら、小さく朔に向かって問い掛けた。
「――――――――それは」
「朔、私を信じてくれ。綾迦はきっと・・・・」
「美颯、そんな話は今は良い。僕の話を聞いてくれ。君を――――――闇王の所へ行かせたく無い」
朔の苦しそうな声に、美颯は朔の胸の中で頷いた。
「朔」
「駄目だ、そんな、そんな事」
ふるふると小さく首を振りながら、朔は何故だか身体の震えをも止める事が出来ない。
「朔。――――――王になれ。そして、皆を守れ。朔ならば・・・・・出来る。まだ付き合いも浅いが、何故だろう。お前なら良い王になれる。そう思う」
「今ッ、今ここに居る君を守れないのなら、僕は王になる資格なんて無いッ!」
「朔」
「僕は、君に会ってから・・・・あれから僕の世界が変わった。それも劇的に、だよ。君は僕にとって特別だ。君を守る。頼む・・・・・・君も一緒に来てくれ」
どうして、こんな言葉が出て来るのか・・・・だが、朔は感情の高ぶりを留める事も無く、胸の中に湧き出る言葉をそのまま吐き出し続けた。
この初めての言葉の羅列を、朔自身にも理解する事は難しい。
なのに、美颯はただ、朔の背中を優しく撫でながら聞き続けた。
美颯は風の力を全く受け継がずに生まれた。それは何故なのか、美颯自身知ることは無い。
幼き頃は力有る兄や妹が羨ましかった。
自分だけ、風の名前を与えられる事も無かった。それが風の一族にとってどれだけ辛いことか・・・
だが、美颯には兄や妹には無い、力が無いものだからこそ有る強さが有った。
力に頼らず生きて行く事。それは今の美颯に取って掛け替えの無いもの。
体術ならば、力を使わない狼迦に引けを取る事は無い。
それに伴う努力のお陰で心も強くなった。
初めて朔に会った時、触れれば壊れる、そんな印象を受けた。
強そうに見えて、脆い――――――まるで硝子細工の様な朔。
何かを抱え込み、それを出すことの出来ない、心が折れてしまいそうな朔。
自分も昔そうだったのだ、きっと。
だからこそ、何度も聖域へ通った。気になって仕方無かった。
風宮に現れた朔は以前とは違った。
きっと良い出会いが有ったのだろう――――――――
素直に嬉しかった。
そして妖獣の討伐に向かうと聞いた時、付いていけない自分が歯痒かった。
自分も力が有れば、と、切実に思った。
悲しかった。
何故だろう。
朔の役に立てないからだろうか。
そう思うと苦しかった。
私が助けたかった。自分と似てる苦しみを抱える朔を助けたかった。
解っている。それは傲慢なのだ、と。
自分が助けたい、と何故そんな傲慢な考えだったのだろう。
恥ずかしい。
どうしてここまで朔に対して思うのだろう。
解らない。
でも、何故だろう、朔。
貴方の助けになりたい。
「朔」
「君を、闇王の所へは行かせない。絶対に――――――」
久々外伝←
おっそ・・・・・・すみませぬ。