燦と流迦、そして涼と鴻は綾迦たちのいる広間へと足早に歩いていた。
あの後緋冴は何も言わず微笑むだけ。
涼は残っていても良かったのだが、そう告げると、涼は小さな声で言い切った。
「一緒にそっちへ行く」
姉上第一の涼がそう言い切るなど、考えれば考えるほど解せないが、後ろの方で鴻と話し続けている涼と鴻には正直有り難かった。
龍迦さまにはお会いしたい。実際、何度も相談したいと考えた事も有る。
土王、闇王の事・・・風華祭の事・・・・
だが、蒼迦さまに会うのは辛い。あの冷たい瞳で見られると、いたたまれない。
ちょっと前に光の萌姫の様に「下賤の生まれ」と罵られる方がまだマシだ。
そう考えながらふと溜め息をつくと、同じように流迦も溜め息をつく。
思わずお互い顔を見合わせると、目を丸くしながら噴き出し合った。
「実は、この間の風宮での宴から――――蒼迦お兄さまとは口を聞いていないのです」
「―――――あれからッ?」
「ええ。咲良が許すまでは、と心に決めたのです」
―――――それは蒼迦にとってどれだけ辛い事だっただろうか・・・。
「そこまでしなくても」
「ッ!燦さま!咲良は泣いていたのですよ?それなのに、酷いわ」
「それは・・・流迦の気持ちは解るけど、どうして咲良さまは泣いたの?」
「――――――お兄さまが大声を。その、私を庇って・・・咲良は何も悪くないのに」
そんな事で咲良が泣くだろうか。
あの時、咲良が自分に聞いてきたこと――――――
記憶を遡りながら、考えてみると、答えは1つしか無い。
だけど・・・・流迦にそれを言うのはどうだろう。咲良は知られたく無いのかもしれない。
だからこそ隠れて泣いていたのかもしれない。
「燦、さま?」
「いや、―――――流迦、無視されるのは辛い事だ。流迦もされたら嫌な気持ちになるだろう?」
「それは、そうですけど・・・・」
「流迦は蒼迦さまだから、と甘えてやっているんじゃ無いか?普段の流迦ならそんな事はしないよ」
・・・・・ん?
自分で言った事とは言え、確かにそうだ。
普段の流迦ならそんな事絶対にしないだろう。そして龍迦にもする事は無いだろう。
蒼迦、にだけ・・・?
「ごめんなさい、燦さま・・・・少し、考えてみます」
そう言って流迦は俯いた。
その横顔に何故だか解らない不安の渦が燦を取り込んで行く。
何だ、この感じ・・・・。
先程までは流迦と心が通じ合ったと感じていた。
なのに、何故だか解らないが、心の中に何か楔が打ち込まれた感覚に、燦は戸惑いを感じた。
燦くんの苦悩は続く←