コンコン・・・・・
普段なら絶対にしない、燦の扉を叩くと、コホン、と小さな咳払いと共に燦がゆっくりと扉を開けた。
その向こうにははにかんだ様に微笑む流迦が立っている。
――――――・・・・・解り易いッ!!!
そう感じたのは、人の気持ちに敏感な涼だけでは無いだろう。
緋冴や鴻が困った様に微笑んでいる。
こういう場合、どう話の取っ掛かりを、と感じているのだろうか。
そう感じると、涼はわざとずかずかと部屋の中に入り、寝台に咲良を注意深く横たえた。
そのまま白い布をその身体に掛けると、近くの椅子を引き寄せ、緋冴を座らせる。
咲良の顔色はだいぶ良くなっているかに思えるが、まだ目を覚ます様子は無い。
その咲良を心配そうに見つめる緋冴の傍らに立つと、涼はその華奢な肩に優しく手を置き、その頭を撫でた。
「大丈夫、―――――もう大丈夫だよ、姫」
「王子・・・・」
コクンと小さく頷く緋冴に優しく微笑みかけると、緋冴も小さく笑う。
その2人の様子をじっくりと眺めていた鴻が燦と流迦に目配せを送る。
「鴻さま、先程、その・・・闇姫さまが来られたと」
「ああ、・・・・あんたの兄たちも、な」
「お兄さまたちが」
「一瞬風の気配が強くなった。もう到着しただろう」
その鴻の言葉に燦が怪訝そうに首を傾げる。
「そう言えば、青藍や隼は・・・・」
「隼はお前の中に帰ったな。青藍は今は風の王さまのとこだ・・・・」
「お前、何でそんな、解るんだ?」
燦と共に結界を張っていた2人の姿は確かに急に見えなくなった。結界に夢中になり、その後の事に忙殺されていた為か、全く2人の動向が掴めなかったのだ。
燦の言葉に鴻が困った様に笑うと、真剣な面持ちで続けた。
「俺は、やけに気配ってヤツに敏感なんだよ・・・。持って生まれたもんだから、理由は解んねぇけど」
「―――まぁ、それは素晴らしいですわ、鴻さま」
「俺、自分の精霊なのに、全く気付かなかった・・・」
落ち込んだ声を出しながら燦が頭を抱えると、その燦の腕を優しく流迦が撫でる。
「気にするな。だいたい、青藍も隼も・・・言いたくないけど今のお前より力は上なんだ。解らぬ様に動くなんざ、造作も無い事だ」
「うん・・・」
「お前はそれを使役する事が出来る。それだけでも凄い事だ。そんなつまらん事に落ち込むより、自分を鍛え上げる方が良いと思う。―――――――俺もだけどな」
「―――――――鴻・・・お前・・・・たまには良い事言うんだな」
しげしげと感心した様に鴻を見つめる眼差しに、鴻は思わず頭を叩く。
「たまにはだけは余計だッ!!!」
「はいはい、五月蠅いよ――――、皆。それ以上騒ぐと出てって貰おうかな?うん?」
「良いじゃ無いか、王子。こうやって皆笑って居れる事が、私は嬉しい・・・」
鴻たちを諫める涼に、緋冴は優しく伝えると、咲良の頬を撫で、そして燦を振り返った。
「燦、流迦を綾迦さまの処に。そして蒼迦を此処へ」
「蒼迦お兄さまを?何故ですの?」
首を傾げながら疑問を投げかける流迦に緋冴は微笑んだだけで何も言葉を発しなかった。
・・・・咲良が目覚めたとき、傍に居て欲しいのは、きっと蒼迦なのだ、とは言えなかった。
流迦の事だ。咲良の為に蒼迦をたき付けるかもしれない。
そうすれば蒼迦はどうなるのだろう。きっと酷く傷付くのだろうな・・・。
幼馴染も辛いものだ、そう考えると、緋冴はこの日一番の溜め息を吐き出した。
幼馴染は大変ですな、緋冴←
次回は燦の苦悩で(笑)