「なぁ、姫さん」
「何だ」
「俺は別に悪くねえだろ。その可愛げの無い態度止めてくれよ」
鴻の言葉に緋冴は火竜を手繰る手を止め、じろりと睨み付けた。
「・・・・・なまじ同じ顔で・・・・・」
「あ?」
「いや、――――そうだな、すまない」
素直にほんの少しの愛想笑いを浮かべながら緋冴は鴻を見詰めると、やや合って視線を外した。
「――――あのさ、その、姫さん。言い方は悪かったけど、涼だって悪気が有った訳じゃ無いんだぜ?それだけは解ってやってくれよ」
「・・・・・」
「何が有ったかは聞かないけどさ、」
大体、聞かなくても緋冴の顔を見れば、自分の片割れがどんな事をしていたかは想像が付く。
鴻は心の中で溜め息をつきながら、涼の弁解を始めてしまっていた。
「その、まぁ、何だ。涼はほら、まだガキだからさ。いや、俺よりは大人なんだけどさ。うん、不器用って言うか・・・・ま、それも俺よりは器用なんだけどさ」
そう言って照れた様に笑う鴻に、緋冴はつい、微笑みを漏らしてしまう。
背中に居る鴻が一生懸命に涼を庇う姿が何となく可愛らしく感じたのかもしれない。
「なぁ、姫さん、涼はその――――――まだ子供っぽい処は多いけど、良い奴なんだよ。だからさ・・・そんな怒ってやらないでくれよ。今だって飄々としてるだろうけどさ・・・内心ヤキモキしてるんだ、きっと」
「良く解るのだな・・・・・」
「そりゃぁ、そうさ。一応双子だし。性格は似ても似つかないけどさ・・・・昔は良く姉上に怒られたもんだ」
姉上、と鴻から言葉が出た瞬間、緋冴は言葉を出せなくなった。
水姫たちの最期は人づてに聞いた事しか知らないのだ。
むやみに立ち入って良い場所では無い―――――
緋冴はそう考えながら、何も聞こえなかった様に火竜を手繰った。
「どことなく、姫さんは姉上に似てるよ・・・・」
「え?」
「強くて凛々しくて。それに別嬪だしな!」
「・・・・・」
「何だ、下向いて。――――あッ、そうか、照れてんのか。でも本当の事だぜ?姫さんいけてるよ」
「やっぱり双子だな・・・」
そう言いながらほんの少し赤くなった頬を手で触ると、大きく息を吸い、鴻に話掛ける。
「どうしてそうやってからかうんだ?」
「からかう?」
素っ頓狂に鴻が聞き返すと、後姿の緋冴は小さく頷く。
「いつも、その、そうやって・・・」
「まさか!俺達、嘘なんか言う訳無いし。ただ正直過ぎるんだって。俺は真っすぐ言い過ぎらしいけどな」
背中に鴻の含み笑いが聞こえると、緋冴も思わず噴き出してしまう。
確かに、鴻は子供みたいに何でも言ってしまうのだ。窘められる事も多かっただろう。
「俺達、さ。元々1つだった訳だろ?なのに全然違うって、昔は良く言われたよ―――――そんな事無いのにな。
勿論違うのは当たり前だけど、似てる部分も多いんだぜ?―――――例えば、好きになる女の趣味、とかさ」
おおっと、鴻もドタバタに参戦かッ?←
そんな事で良いのか(笑)