秋霖雨 episode 2■□■□■□■□■□
はぁ、あの子の事やったらよう覚えてる。
あんさん、でも何でそんな事お聞きなさる?
ほう、ほう―――――――
昔の知り合い・・・・
そうやな、あんさんくらいの凄みのある・・・・いや、気を悪くせんと。
知り合いかも知れませんなあ。
ほやけど、わしも会ったんはだいぶん昔や・・・・。
ほれ、そこの妓屋のユキ坊なんかはつい最近とか抜かすけどな、わしはもう随分と昔。
しかもユキ坊はそりゃあ別嬪やったて。
くくく・・・・・
わしが会ったのもその別嬪や。
狐に化かされてもおらん限り人違いかもしれん。
え?
ああ、そうや。あの子はこう龍の巻き付いた柄の剣持ってな。
うんうん、そら見た事も無い剣や。
ここだけの話、あの剣売り飛ばしたらそりゃあええ金に・・・・冗談や。
そんな怒りなさんな。
え?あの子の行く先?
――――――そりゃぁ、あんさん。
東や。
何で東やて?
さてな―――――
この歳になって解るんかもなぁ。
くく、解らん顔して。
あんさん、幾つや?
30歳?ほうほう――――そうは見えんなぁ。
そない優しい顔して、何人殺して来たんや?
ああ、年寄りの戯言や。
こんな爺殺したところであんさんの名が上がるとは思えんよ。
やめときなはれ。
そんな殺気だしてもこの爺は怖くないんや・・・・。
あんさんもあの子探してるなら解るやろ。
あの子に会った事がある奴はなぁ、――――何でか、その後の人生、あんまり怖く無くなる。
これからどう生きるとか、死んだらどうなる、とかな―――――
なあんも無くなる。
生きてる間を懸命に生きようと思える・・・・
不思議やなぁ、ほんま。
行くか?
そうか――――――
ほな気を付け。
ああ、そうや、あの子に会ったらこれを・・・・。
それは椿の押し絵や。
ふふ、素人の作ったもんやけどな。
この爺がやっと作れたもんや。
椿の花びらが散りながらあの子の周りを舞ッとった。
椿はな、あんな綺麗に花びら舞わんのよ。
枯れかけてからやっと花びらがこう、ほろほろ落ちる。
それまではぼとん。
花が落ちる。
それやのになぁ、あの子の周りの椿は自分から花びら舞わしとったんや。
――――ああ、こんな話よう解らんなぁ。
すまんすまん。
え?こんなに金子を?
はは、いらん。
持って帰り。
・・・・あの子に宜しくなぁ。