緋冴は何故こんな状況に陥ってるか解らないまま、嬉しそうに火竜を走らす涼を見上げた。

思いがけず、涼の身体に密着してしまう身体を少しずつずらすと、それに気付いたのか気付かないのか、涼はいとも簡単にまた身体を密着させて来る。

この王子は何を考えているのか・・・・

双子の片割れ、鴻と一緒に居る時は大人びて見える涼は緋冴と2人切りだと、やけに幼く見える。

急に怒ったり、笑ったり、実に忙しい。

幼い頃から龍迦や蒼迦と居たせいなのか、緋冴は余り男、と言うものを意識した事など無い。

涼にしても、弟みたいなものだ。

だが、ここまで密着されると、いくら弟みたいに思っていても、流石に意識してしまう。

「王子、あの、もう良いから・・・・」

「ダメ。怪我でもしたら大変だから」

「じゃぁ、もう少し離れるとか・・・」

困った様に自分を見つめる緋冴に、涼はほんの少しだけ悲しげな表情を見せる。

「僕に触られるの、そんなに嫌なの」

「そんな事、言って無いだろ・・・・だけど、さすがに恥ずかしいから」

言いにくそうに語尾を下げながら話す緋冴の顔が恥ずかしそうに背けられると、涼は一瞬嬉しげな表情を見せ、そして緋冴に気付かれぬ様、その表情を隠した。

「恥ずかしい?――――――どうして?」

「そ、それは――――だって・・・」

「だって、なに?」

涼は緋冴の瞳を覗き込むと、優しく問い掛ける。

「風の王子に、こんな風に抱かれた事は無いの」

「そんな、」

緋冴は思わず反論し掛けたが、そう言えば、龍迦に抱かれた事は有る。

木に登って落ちた緋冴を龍迦が抱きとめてくれたのだ。今より幼かったとは言え、その時は今の様に恥ずかしさを感じてはいなかった気がする。

「それは、有るけど・・・・龍迦と王子は違うだろう」

困った様に緋冴が瞳を伏せると、涼はその滑らかな頬をそっと撫でた。

「――――――ッ」

「こんな事されたの」

真っ赤になって撫でられた頬に手を置く緋冴の肩に涼は手を置く。

「それとも、こんな事?」

そう言って緋冴の肩を引き寄せ、強く抱き締める。

「やめ、――――王子ッ」

「鼓動が速いね」

「王子、離せッ」

「体温も高くなって来た」

「はな、して」

「嫌だ」

嫌だ、と言った涼は更に力を込めて緋冴を抱き締めると、思った通りの華奢な身体をゆっくりと撫でた。

「どうし、て」

「どうして?」

「からかうのは、やめ・・・・」

からかう?僕が?

全く、どうしてこんなに鈍感なんだ・・・・






まだまだ続く鈍感姫とおこちゃま王子←