◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇Far expectation 11


「朔・・・・・最近、忠義な精霊が随分減っておるのを知っているか?」

少女は哀しそうに朔を見ながら呟いた。

「どう言う、意味?その、不忠義者ばかりって事?」

「いいや、違う。己の信じた王のするべき道の為、自身を投げ打つ精霊が多くてな・・・・そのせいで少なくなったのだ」

朔の返答にやはり哀しそうに微笑んだ少女は身を起こし、そのまま話し出した。

「有る王子を助ける為、その身を匿った王族は最初は書簡で誤魔化し続けた。だが、それは長くは続かなかったのだ。王子の父王はまるで争いを匂わせる書簡を送り付けて来た。それを知った忠義な精霊は己の身を犠牲にしたのだ・・・・・そう、それも王族に黙ってな。わざと己の身を彼の王の近くまで彷徨わせ、わざと捕まり。――――ふふ、皮肉なものだ。そのお陰で書簡はしばらくの間途絶えた。やがてまた書簡が届くようになると、また忠義な精霊が忽然と姿を消す・・・・・」

少女が呟き続ける話に、朔は愕然とした。

自身の唇が小刻みに震えて来るのを止められない。

「細も、逝った」

「細が?!」

「水の精霊は次は美水が逝くだろう。次は誰だ?風も土も火も華も、光だって。皆忠義な精霊たちは進んでその身を差し出すだろう」

淡々と朔に少女は話し続ける。思いも寄らなかったそんな話に朔はただ拳を握りしめる事しか出来ない。

「私はもう、自分だけ安穏と暮らす事など出来ない――――私が行けば、彼の王も今まで以上に長く書簡を送らぬかも知れん。これでも姫と名が付くのだから」

「きみ、は・・・・」

「力無く生まれた私が出来る事はもうそれしか無い・・・闘う事も、見守る事も出来ん、この身を差し出す事しか考え付かん」

そう言うと、少女はおもむろに朔の腕を自分の腕に絡め、その腕にそっと顔を乗せた。

「朔。世界を見て、そして決めて来い。信じ難い事も有るだろう。信じられぬ心も有るだろう。だが、朔が決めて戻った時、きっと何かが変わる。だから朔、――――私の妹を頼む」
「いもう、と」

「そうだ、朔。綾迦はきっとお前の役に立つ。私では出来ない事をあの子はお前にしてくれる」

どことなく気付いていた事実を少女の口から聞かされた時、朔の頭がクラクラと揺れた。

「私の名前は美颯(みはや)。狼迦の妹で綾迦の姉・・・これも何かの縁だったのだろう。先日朔を風宮で見かけた時は肝を冷やした」

そう言うと、美颯は微笑みながら朔を見た。その美颯の笑みがどことなく儚げで哀しそうに見えて、朔は思わず美颯の身体を抱き締めた。

「そんな事をするな――――あいつは、無月はお前が思うほど、生易しい男じゃ無いんだ!」

「でも私が行けば、他の精霊を守る事が出来る、それも事実だ」

美颯は抱き締められた事にすら動じる事無く、朔に答える。

その決意を、どうやって止める事が出来るのか・・・・

ただ2回、たった2回しか会った事が無いその少女を何故か熱く抱き締めながら、朔はそればかりを考えていた。







お姉ちゃん、美颯。

朔、止めれるか(笑)