その頃、燦は嫌がる鴻と共に火竜の背に乗っていた。

凄まじい速度で空中を駆けていると、後ろから鴻の不服そうな声が聞こえる。

「ったく・・・・・どこまで心配症なんだよ」

「五月蠅い」

冷たく切り返す燦に鴻はふう、とわざとらしく息を吐く。

「鴻だって考えてみろ。そうだな・・・今一番好きな女が居るとするだろ?それをだな、もし・・・・別の男に見られるとか想像してみろよ」

「ふん・・・・そんな奴俺は居ないね」

「―――――いつか鴻にだって解るさ」

「・・・・・俺は、」

燦の言葉に思わず言い返しそうになった鴻はそこで言葉を止めた。

「何だよ」

「いや、別に。なぁ、一回風姫や華姫の処回ったらどうだ?もしかしたらまだ迎えに行ってる途中かもしれないし」

「お、そうだな。確かに流迦や咲良さまを迎えに行ってるかもしれないもんな・・・冴えてるな、鴻」

「こっからだと、どっちが近い?」

「華宮だな。よし、飛ばすぞッ!」

燦は鴻の提案に火竜を旋回させ、華宮に向かって前以上の速度で飛んだ。




緋冴の髪にそっと口付けを落とした涼はゆっくりと名残惜しそうにその髪を離した。

ハラリ、と涼の手から滑り落ちて行くその髪はまるで絹の様な手触り。

「王子、そろそろか?―――――おや?」

不意に緋冴が怪訝そうな声を上げたのに、涼は気付くと、緋冴の傍に近寄った。

「どうしたの。姫・・・」

「あれを」

緋冴が指し示す方向に、何やら人影が見える。ハッキリとは見えないその姿に涼は眉を顰める。

――――燦たちか?

もう気付かれたか?

瞬時に色々な考えが涼の頭に巡って行く。

いや、―――――燦が余程の阿呆で無い限り、風宮か華宮へ行く事は当たり前だ。

緋冴があの燦に言伝を残す事も計算の内。勿論誰と行くかは明記するはず・・・・

真っ直ぐこちらに来るよりも、風宮か華宮で阻止しようとするだろう。

それにしては早過ぎるし、目的地よりも程遠い場所での人影だ。

「誰か散策にでも来たのでは無いの?」

「そうだろうか・・・・それならば良いのだが」

「気になるの?」

「―――――どうも龍迦に見える。ああ、先程話していた流迦の兄だが・・・・あやつ、こんな所で何を?」

龍迦、とまたも緋冴の口から名前が出ると、涼は明らかに不機嫌な顔になった。

「ここは聖域では無いのか、王子」

「――――ここは違うよ。遠出にでも来たんじゃ無いの」

思わず出した涼の口調は明らかに棘を含み、その口調に緋冴は振り返って涼の顔をまじまじと見た。

「え、と・・・・どうしたんだ、王子」

「別に。気になるなら行けば良いじゃ無いか」

隠す事もせず険を含むその表情に緋冴は一瞬たじろぎ、だが首を傾げながら涼を見つめる。

「王子?何か怒っているのか?」

その心配そうな顔に、涼はゆっくり首を振ると、微笑みながら言った。

「怒って無いよ。ごめんね、姫。気になるなら降りようか」





おっと、涼、ヤキモチですか(笑)

はい、燦、阿呆決定←