涼の中で緋冴に対する気持ちは徐々に熱を帯びて来たのはつい最近。
最初は姉に対する思慕の念。それからしっかりしてる様で天然なそんな緋冴を可愛いと思い出した。
それからは何をするにも緋冴の姿を探す。
初めて姫、と呼んだ時、緋冴はほんのり頬を染めたっけ・・・
ふふ・・・可愛い僕の姫。
緋冴が自分の事をどう考えているかなんてどうでも良い。
緋冴を手に入れたい。
嫌われて無い自信は有る。
奥手の彼女をどう落とすか―――――
恋愛には程遠い彼女の瞳を恋愛に向けるにはどうしたら良いのだろう。
ぐるぐるとそんな考えを巡らすと、緋冴がいきなり涼を振り返った。
「王子、この辺りか?」
「―――――」
振り返る緋冴の瞳は少女の様にキラキラ光って、これから体験する新しい事に興味津津の表情を浮かべている。
温泉が裸で入るものだ、と知ったら緋冴はどんな顔を僕に見せてくれるんだろう・・・・。
勿論一緒に入るなんてそんな短絡的な考えではいけない。
最初からそんなに飛ばすと嫌われてしまう。
いや、緋冴には意外と正攻法が効くかもしれないな・・・・。
「王子?」
ちょこんと首を傾げる緋冴の可愛らしい仕草に涼は微笑むと、緋冴近くまで顔を近付け、耳に囁いた。
「ほら、もうすぐそこだよ」
「そんな近くで言わなくても聞こえるッ・・・」
頬を赤らめながら言う緋冴に、惚けた顔を作る。
「だって、この火竜速いから、風の音で聞こえないかと思って」
「だからって・・・・・――――」
近付き過ぎ、そんな言葉を緋冴は飲み込むと、やや有ってまた前を向いた。
この王子が考えている事がいまいち掴めない。
からかい半分、本気半分なのだろうか―――――
龍迦や蒼迦、燦や烟とはまた違う涼に、緋冴は知らず、小さな溜め息をついた。
「姫、どうしたの?」
「いや、王子は私の幼馴染とは違うな、と思ってな」
「幼馴染?」
「そうだ。流迦の兄たちだ」
緋冴の言葉にふと眉を顰める。緋冴の表情は背を向けているから見えないが、彼女はどんな顔で幼馴染を思い浮かべているのだろう。
「長兄が龍迦と言う。これがまたなかなかの男だ―――――そして次兄が蒼迦。小さい頃は良く遊んだものだ」
「へえ、そうなんだ」
「龍迦は剣術に優れていて、良く教えて貰ったものだ。そうそう小さい頃は皆で火竜から落ちた事も有る」
くすくすと笑いながら当時の事を思い出しているのだろう。
緋冴は実に楽しげだ。
「龍迦、さまね」
「王子もいつかは会うだろうな。こう、風の王子らしくない奴だ」
―――――興味無いよ
そう言いたいのを堪え、涼は押し黙った。
そう言えば、姫は僕の事を名前で呼んでくれた事など一度も無いのでは無いだろうか・・・
ふと過ったその事に堪らなく不快感が込み上げて来る。悲しいような、腹立ちのような・・・何とも言えない気分に陥った。
「自慢の幼馴染なのだ。王子もきっと仲良くなれる」
「――――――そう」
余りに素っ気ない涼の返事にも、緋冴は構わず話し続けている。
―――――この鈍感姫!
思わず口に出しそうなそんな気持ちを何とか抑えると、不意に緋冴の揺れる髪を手に取った。
「姫の髪は綺麗な赤だね」
「――――ッ!急に触るとびっくりするじゃ無いか。・・・・・・そうか?火の色だそうだ。燦の髪は紅だろう?あれは光紅さまの血だろうな・・・・」
「姫の髪が綺麗なんだよ」
そう言うと、涼は緋冴の髪の一房を指先で撫で、そして緋冴に気付かれぬ様にその髪に口付けを落とした。
うん・・・・・・涼のウダウダ劇場←
って言うか、もう押し倒せ(笑)
いや、先に燦と流迦のムフフをお送り致します。