「姉上!!姉上?」

バタバタと火宮を走り回る燦の姿にひょっこり顔を出した鴻は、慌てた顔の燦に手を振りながら近付いた。

「どうした、燦―――――ゲボッ!」

思わず変な声を出したのは、燦に近付いた瞬間燦の腕がもろに首筋にヒットしたからだ。

「な、なにしやが・・・・・」

「涼はどこ行った?おい」

「知らねえよッ!!何だ、藪から棒に!!!!」

「コレを、コレを読めッ!」

鬼の様な燦の形相に渋々燦の差し出した紙を手に取り、目を走らせる。



燦へ


心配するといけないから言っておくが、今日は水の王子に前々から誘われていた『温泉』なるものに出掛けて来る。流迦と咲良を誘ったので、帰りは2人を送って帰って来るから遅くなるかもしれん。

だが、まぁ、そうだな―――――なるべく早くは帰るようにする。

そうそう、鍛錬を忘れずにする様に。もう1人の水の王子と共に励めよ。


緋冴





「―――――――・・・・」

「特にここを読め。この部分だ。良いか?流迦と咲良さま、と有る」

「・・・・・・はい」

「お前の片割れは一体何を考えているんだッ!!!俺だってまだ全部見て・・・いや、それは置いといて」

コホンと小さく咳払いをすると、燦はちょっと赤らめた顔をまたも鬼のように豹変させると、鴻の肩を揺さぶった。

「――――――追い掛けるぞ」

「はぁ?!嫌だよ、俺」

「嫌だぁ?」

「だって涼は別に純粋な気持ちなだけかもしれないぞ?もしかしたら3人だけで入らせて自分は別の場所に居るかもしれないし」

うっ、と燦は息を飲むと、しばらく考え込む。

しかしやや有ってやはりぶんぶんと首を振り、鴻の首を掴んだ。

「いや、やっぱり涼の事だ・・・・心配過ぎるッ!まあ、姉上だけなら良いんだけど」

「へぇ?良いんだ、緋冴姫だけなら」

「うん、まぁ・・・・って何を言わせるッ!」

そう言うと燦は嫌がる鴻をずるずると引き摺り、火竜へと放り投げた。




「残念だったな、流迦も咲良も来れないなんて」

「そうだね、姫・・・・2人共お忙しいんだね、きっと」

緋冴の言葉に艶やかな微笑みを向け、涼は頷いた。

実際の処、2人を誘って等居ない。「僕が誘っておくね」とそう言っただけで、2人に連絡すらしていないのだ。

2人に確認を取らないなんて――――姫はやっぱり可愛いな・・・・

そう考えながら緋冴の後ろから流れる長い赤い髪を眺める。

火竜の上で2人切り・・・・

緋冴の細い腕が軽く火竜を手繰るのを嬉しそうに見つめる涼は思わず抱き締めたくなる衝動を抑え、これからの時間に思いを馳せた。







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結構お気に入りの話になって来ました(笑)

面白いのでまだまだ続きまーす。