◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇Far expectation 7
「朔、どうだ、陽の一族たちは」
煌びやかな見目麗しい一族たちを見渡すと、嬉しそうに棗が朔の肩に手を置きながら呟く。
そんな棗の手を煩わしそうに外しながら、こちらをチラチラと盗み見る一族を一瞥すると、朔は興味無さ気にそっぽを向く。
「相変わらずな奴だな、少しくらい興味を持てよ。いや―――しかし眼福眼福」
何がそんなに楽しいのか、ウキウキした調子で言葉を続ける棗の横腹を肘で軽く突くと、棗は快活に笑った。
此処、風の宮殿には陽の一族の代表者が集まっているらしい。
朔には初めて会う面々ばかりだ。緊張が朔の身体を突き抜ける。
そんな朔の心を知ってか知らずか、棗は相変わらずの調子で笑顔を崩さない。
「煌も来るらしいぞ」
「煌が?―――そうなのか」
「ちょっと安心したか?後で涬も来る」
硬い表情をほんの少し和らげる朔に、棗は心の中でほっと息を付く。
「涬もか・・・そうか、うん。ちょっと緊張が解けた」
「そっか。陽の一族は後、光と火と風だ。どんな王子達なんだろうな。いやぁ、実に楽しみだ」
うんうん、と頷きながら棗は朔の背中を叩いた。
女官に付き従いながら広間に付き、扉が開かれると、即座に数人が立ち上がり、2人を迎えてくれた。
「ようこそ、闇の王子、朔。そして土の王子、棗」
良く響く低い声は目の前の青年から発せられている。
黒髪を長く垂らしたその青年は柔和な笑顔を向け、手を差し伸べた。
「俺は風の狼迦。向こうに居るのが妹の綾迦。そしてその向こうの赤毛達が火の焔と緋影。それから光の瞬と皇。華はまだだけど、知ってるよね、煌がもうじき来る」
その手を躊躇いながら握ると、狼迦は順にその場に立っている数人を紹介してくれた。
「そして向こうに座って居るのが、風王―――鈴迦・・・母上だ」
「良くいらっしゃいましたね、朔どの・・・・」
狼迦の紹介が終わると、満を持した様に柔らかな声が朔に向けられた。
柔和な笑顔をその優しげな表情に湛え、その美しい女性は朔に向かって立ち上がった。
「棗どのも・・・・久しいこと」
「鈴迦さま・・・・お久しぶりです」
「は、初めまして」
眩しげに瞳を細める鈴迦に、棗と朔は順に頭を下げた。
「畏まらないで良いのですよ・・・・・さぁ、皆座りなさい。話はそれからにしましょう」
鈴迦が優しく皆にそう告げると、それぞれに小さく頷き、席に着く。
「話は―――――大体解っています。最近蔓延る妖獣や幻獣の事は私も心を痛めていた処です。――――それで貴方はその討伐に向かいたいと」
「はい」
鈴迦の問い掛けに朔は頷くと、水王が認めた書簡を鈴迦に手渡した。
「それは後で見ましょう。しかし朔どの・・・・危険な事なのですよ・・・・それでも?」
「それでも、行かなければなりません」
「原因はそれとは限らないのに、ですか?」
鈴迦の言葉に周囲の王子や姫は首を傾げている。どうやら、妖獣や幻獣が蔓延っている原因が闇王かもしれない、と言う事は知らされて無いらしい。
「はい。どうしても行かなければなりません」
静かに決意を込めたその答えに鈴迦は微笑みながら頷き、周囲を見渡した。
「聞きましたね。誰か、朔どのの手助けをしたい、と思う者はいますか?」
「鈴迦さま、それは―――!」
朔の慌てた声を鈴迦は優しく瞳で制すると、また周りを見渡した。
「これは、天界全ての問題です。私たちだけが傍観する訳には行きません」
鈴迦の言葉に数人が頷くと、その場に立ち上がった。
「俺は行く。良いだろ、鈴迦さま」
「私も、行こう」
「私もだ」
「母さま!私もッ!」
次々に挙げられる声に鈴迦は満足気に頷いた。
最後の1人までが立ち上がると、朔は思わず立ち上がり、皆に頭を下げた。棗もそれに続く。
「朔どの、顔を上げなさい。皆これから貴方の仲間―――いいえ、友人となるのですよ」
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