◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇Far expectation 4


柔らかな木漏れ日が降り注ぐ中、朔と細は2人、闇城の近くの聖域へ散策がてら歩き続けていた。

闇の一族ならば一度行った場所へ闇の力を使って移動出来るが、細を連れて移動するつもりはさらさら無く、ひたすら長い道のりをただ歩いていた。

優しくない、と言われればそれまでだが、朔はやけにこの細、という精霊に心を置けなかった。

無月に対する言動にしろ、自分を水王の元に連れて行くだの、何だか細に何もかも仕組まれている気がしてならなかった。

正直、闇城から許可が出て闇城を出た事など生まれて一度も無い。

一度も出た事が無いのは無月が極端に他の一族との関わりを嫌ったからだ。

せいぜい隠れて一度行った事が有る聖域へほんの僅かな時間、息抜きに出るだけだ。

だから細には悪いが堂々と闇城の外に出れるのは嬉しい。

棗と知り合えたのだって、母がたまたま土王の血縁で有ったからに過ぎないのだ。

この間会った陽の一族の少女にだってもう2度と会えないだろう。

自分は隔離された存在。多分無月が死ぬまで、あの男に逆らうことなど出来ない。

そう育って来たのだ。

不意に正面に美しい光景が広がって来ると、後方でほう、と溜め息が聞こえて来る。

「朔さま、美しい処ですわね」

キラキラと光を反射するせせらぎ、広大な緑の絨毯、色とりどりの花々・・・。

「――――ここは第1王子の聖域です」

「そうですか・・・・」

聖域とは聞こえが良い。実際は墓所に過ぎないのだ。

やるせない気持ちを隠し切れずに俯くと、細が小さく呟いた。

「このせせらぎならば・・・・」

「え?」

細の言葉を聞き返そうと朔が顔を上げると同時に、細の両腕が高く上がり、それに呼応するかの様にせせらぎの水が霧雨の如く辺りに降り注いだ。

霧雨のベールが細と朔の周りを円状に取り囲むと、細は朔に微笑みかけた。

「何のおつもりですか、細どの」

朔が厳しい視線を細に向けながら、腰の短剣に手を掛ける。その姿を軽く手で制すると、細は首を振った。

「2人切りでお話したかっただけです。至る所で闇王が話を聞いているみたいですから。全く―――こんなに粘着いた気を送ってくるなんて・・・噂に違わぬ馬鹿王なのね」

そう言うと細は今までの表情とはうって変った様に快活な笑みを朔に向けた。

そしてゆらり、と細の姿が揺らめくと、細とは似ても似つかない・・・いや、細よりも美しい女性が朔の前に現れた。

「朔さま。改めてご挨拶申し上げます。私は水の4大精霊の1人、美水と申します。謀っていた事まずはお詫び申し上げますね」

「な、」

朔は驚きの余り声も出せず、眼前の美女をただ見つめるばかりだ。

「驚きますわよね、ごめんなさい。でも水王も私も貴方に害をなそうとした訳では無いのです。どうかお許し下さいね」

そう言うと、美水は可愛らしく首を傾げてみせた。

「一体、どう言うつもりなんだ?僕だけで無く、闇王まで謀るなんて――――こんな事が知れたら大変な事だよ」

「そうですわね・・・・解ってますわ。でも、朔さま。どうか私を・・・いいえ、水王さまを信じて下さい。私は水王さまの第1王子、透の婚約者でも有ります。もし信じて頂けないので有れば、私をここでお斬り捨て下さい」

「第1王子の婚約者――――?それはまた・・・・随分思い切った事を」

朔がそう呟くと、美水は可笑しそうに笑い、頷いた。

「良いよ、婚約者どの。一体、僕に何の用なの?」

「願いは1つだけです。先程も申し上げた通り、ご一緒に水王さまの処へ」

「それはさっき闇王さまも了承しただろう」

「いいえ、朔さま。御母上もご一緒に参るのです。他にも朔さまが御心砕かれている方がいらっしゃるならばご一緒に」

「どう言う、意味なんだ」

「朔さま。どうか心お静かにお聞きくださいませ。今この天界に蔓延る妖獣や幻獣の数は夥しく増加しています。その原因は、今はまだ調査中ですが・・・・」

そして一瞬、美水はその瞳を揺らめかせ、強い意思を込め、言葉を続けた。

「現闇王、無月では無いか、水王さまはそう考えていらっしゃいます」






はい、お見合い相手変身(笑)←