流迦の身体を抱き締めながら、胸に拡がる涙に冷たさを感じだした頃、流迦はやっと顔をあげ、燦を見た。
「どこか、辛い処は有りませんか?燦さま・・・」
必死に涙を堪えながらそう呟く流迦の涙を拭うと、燦は小さく微笑みながら頷いた。
「ごめんな、流迦」
「――――結界を張るのは初めてだったのでしょう?なのに、2つも」
「・・・ああ、凄い力のうねりを感じたよ。それこそ意識が飛ぶほどに。青藍が助けてくれなかったらどうなっていた事か」
あの時、青藍が後ろで自分の力をうまく制御してくれたから、何とか結界を張れた気がする。
そのままゆっくり崩れ落ちた自分を支えてくれたのも青藍だった気がする。
「私も一緒に行けば良かった・・・」
「流迦」
「そうしたら燦さまのお力になれたかもしれません」
切なげに流迦はそう呟くと、燦の頬にそっと両手を添えた。
「心配ばかりかけて・・・いけない燦さま」
緋冴の言い方を真似て流迦は言うと、微笑みながら燦の頬に口付けた。
「もう置いて行かないで・・・こんな思いはもう嫌です」
「・・・・・」
「約束して下さい、燦さま」
「・・・・・」
何も答えず、流迦を抱き締めると、流迦の唇から小さく溜め息が聞こえる。
「流迦、水王さまたちは?」
「皆さま燦さまのお目覚めをお待ちでした。私は、――――燦さまに付いていましたので、お話の内容などは知りませんが・・・」
やっぱり、ずっと付いていてくれたのか。
「涼さまと鴻さまにも、あの、お会いしました。ご挨拶だけでしたけど・・・」
「ああ、そうか・・・。涼と鴻もまだここに?」
燦が流迦にそう問い掛けると、流迦が驚いた様に燦をまじまじと見つめ返す。
「どうした?」
「いえ、あの・・・仲良くなられたのですか?」
ああ、そうか。
流迦の涼と鴻の印象はまだあの聖域に入った時のままだったな。
確かに水宮に行った時は俺も委縮してたし・・・。
燦は心の中でうんうんと頷くと、流迦の頭を撫でる。
「ああ、だいぶ、ね」
そう言ってにっこりと笑みを浮かべると、流迦は安心した様に微笑む。
「まだ、私、少し怖いのですけど・・・でも燦さまがそう仰るんですもの。きっと仲良くなれますわね」
「ん?そうだな・・・・」
そう言い掛けながら、ふと、涼と鴻との最後の会話を思い出し、燦はピタリと動きを止めた。
そうだ、そうだった。帰ったら流迦に婚姻の申し込みをしようと強く誓って・・・・。
「る、流迦。あんまり仲良くしなくて良い」
「え?どうなさったの?」
急に表情の変わった燦を驚いきながら流迦は見つめ、訝しそうに首を傾げた。
「ああ、いや、その・・・ホラ」
「変な燦さま」
そう言うと、流迦は寝台から身を起こし、立ち上がろうとする。
慌てて流迦の腕を掴み、引き寄せると、流迦の小さい声が上がり、バランスを失った身体はそのまま寝台へ崩れ落ちた。
「もう!燦さまったら!」
「ごめ・・・・ッ」
慌てて身を起こすと、自分の真下に流迦が寝そべった形になっている。横向きになっているとは言え、寝台の上に居る流迦にこの上なく色気を感じてしまうと、燦は思わず瞳を背けた。
燦のその仕草に慌てて流迦も身を起こそうと燦の腕に捕まる。
「わっ」
目を逸らしていた為か、急に流迦の手が腕に触れられ、次は燦がバランスを崩し、そのまま流迦の上に覆いかぶさった。
「つぅ・・・」
燦の身体が全て流迦の身体にのしかかり、流迦の苦痛の声が聞こえると、燦は慌てて顔を上げ、そのまま流迦と見つめ合う形で止まってしまった。
「燦、さま・・・あの・・・・」
ど、どうしよう・・・こう言う時ってどうすれば・・・ッ。
真っ赤な顔で自分を見つめる流迦の潤んだ瞳にどうしようもない熱情が込み上げ、燦は理性を保とうと必死になって自分と闘っていた。
この素敵イラストは勿論、桂 飛鳥さま。
