◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇Far expectation 2
「何だか楽しそうだな、朔」
部屋の外からコンコン、と扉を叩く音と、楽しげな男の顔が覗いている。
別段、扉を閉めている訳でも無いのに、必ず部屋に入る時には開け放たれている扉を叩くのがこの男の癖だ。
声の主にわざわざ振り返る事も無く、腕だけを上げて答えると、小気味良い足音と共に大柄な身体を寄せて来る。
「何か良い事でも有ったのか?」
「それより何だ。こんな日にわざわざ・・・」
そう答えると大柄な体付きの男―――土王の第2王子、棗が軽く頭を叩く。
「こんな日、とは何だ。ご機嫌伺いに来てやったのに」
そう言うと大げさに溜め息をつき、両手と首を振り、ちらりと横目で闇王の第3王子―――朔にからかい交じりに瞳を向ける。
大きな体躯の棗に対し、朔はその半分ほどの痩躯。陽気に声を上げる棗に淡々と言葉を返す朔は、大きな体を手で押し返すと、気だるそうに棗を見た。
「こんな日、だ。本当に」
「何を言う。お前の見合いじゃ無いか。しかも相手はあの美人で名を馳せる水の精霊、細(ささら)だぞ?」
嬉しそうに棗は眼を細め、眼前の長年の友人を見る。
その瞳は心底楽しそうで、これから起こるで有ろう見合いに心踊っているかの様だ。
「棗、見合いなんてつまらない。恋なんて―――した事すらなんいんだぞ。どんなモノかも解らないんだぞ」
朔の言葉に棗は軽く大きな肩を竦めると、安心しろ、と朔の肩を抱く。
「だからこれからするんだろ?違うのか?」
「それが見合い相手との決まったものとはね。全く、何で闇の一族なんかに生まれたんだか」
「仕方ないさ。いずれ俺だって見合い、見合いの毎日だ。こっちが選べる立場だから、相手には同情するが、な」ニコリ、と快活そうに棗は微笑むと、浮かない顔の朔におどけてみせた。
「相手も可哀想だが、俺は自分自身に同情だ」
「じゃあ、闇王にそう言えば良いじゃ無いか」
「出来る筈が無いだろう?あれは王の器じゃ無い。言い伝えに有る、陰の一族に何代かに降り掛かる災いの男だ。残忍で、横暴で―――――」
朔が嫌悪の感情を表に出し始めると、棗は慌ててその口を塞いだ。
「止めろ、誰かに聞かれでもしたら、」
その言葉に素直に朔は従うと、卑屈な笑みを美しい唇に浮かべた。
「解ってるさ、自由など――――無いんだ」
朔さま。一体何が有るんでしょう。
やっぱり外伝でも謎解きかッ←