「あの、さ・・・その」

「何だよッ?涼の勘違いだからなッ!そりゃ、可愛いとは思うけど、その・・・好きとかそんなんじゃ無いからなッ!」

凄まじい剣幕で真っ赤になって否定する鴻の顔からは到底勘違いとは思えない。

「どこが勘違いなんだか」

肩を震わせて笑いを隠し切れない涼は燦の肩に手を置くと身を屈ませながらまたも笑っている。

「鴻が勘違いって言うなら良いけど―――流迦は駄目だからな」

燦のその言葉に鴻の動きが止まり、涼は身を起こした。

「「どう言う意味?」」

「兎に角、流迦は駄目だ」

兎に角って何だ?

確かにお互い好きだって言い合ったけど、婚姻の約束すらしていない。

お互いを縛る契約をしていないからこそ、心が粟立った。

涼や鴻の見目麗しいのもどんどん癇に障る。もし流迦が―――そんな事を考え出すと、だんだんと心が暗い闇に囚われて行くようで、何ともやるせない。

その燦の姿に涼と鴻は顔を見合わせるとお互い目配せを交わし、燦の肩に両側から手を掛けた。

「ごめんごめん。気にしないで。冗談だから」

「そうだ、涼が下らん事を言うからだ」

優しく2人にそう言われると、自分が余りにも子供っぽい行動をしている事に腹が立つ。

しゅん、と項垂れる燦に困ったのか、2人は救いの瞳を青藍と隼に向けた。

2人はちゃんとこっちを見ていて、呆れた顔で項垂れる燦を凝視している。

「涼、鴻、子供っぽくてごめん」

「いや、俺らが悪かったよ」

「調子に乗ったのは僕だから」

3人は口ぐちに謝罪の言葉を出すと、顔を見合わせ、微笑んだ。

帰ったら、流迦に婚姻を申し込もう。そうすれば、流迦との関係をハッキリ皆に告げる事が出来る。

流迦を好きな男が出て来たって、流迦は俺の恋人だって言える。

如何せん、目先に色んな出来事が多過ぎて、流迦との関係をハッキリさせなかった自分に腹が立つ。

そんな自己嫌悪を何とか心の隅に追いやると、燦は両側を涼と鴻に抱かれながら涬の傍に歩み寄った。

「水王さま、それで、どうされますか」

「ふむ・・・まぁ、お前たち3人も仲良くなったみたいだし。隼の結界はどうかな?燦」

燦は隼を一瞥するとその心配そうな顔を見た。

多分大量の力を必要とするのだろう。今の自分では隼の手間にしかならない。

それは解ってる。

「やります。良いね、隼。それに青藍も。皆でまずは火宮へ。それから風宮へ行きましょう」

『我が君――――もう、・・・解ったわ。気に食わないけど・・・・仰せのままに』

「そうか。ではそうしよう。涼、鴻。まずは水宮に住む精霊たちに伝えなければ。それから―――母に挨拶するのを忘れるな」

「「はい、父上」」

涼と鴻はそう言うと軽く頭を下げ、部屋を出た。

父に言われた事をすぐに実行に移す事が最善なのだと、2人は理解出来ているのだろう。

「さて、では隼。どの様に結界を張る?」

『水の結界で外部からの侵入を阻んでいるから・・・あたしは侵入した者を排除する結界を張るってのはどう?』

「それだと神殿が悪しき血で汚れるかもしれないぞ」

青藍の意見に涬と隼は頷く。

『では2重の守りの結界になるわね』

「そうだな・・・守りだけでは不安要素が残るが・・・・」

涬は眉を顰め、顎に指先を掛けながら呟く。

「そうだ、良い考えが有る。水で守りの結界を。風で排除の結界を。そして火で浄化の結界を張ろう」

『ちょっと涬!!あんた、我が君を殺す気?!』

「確かに良い考えだが・・・良し、燦。俺が補助してやる。補助なら綾迦との契約に背かない」

どうだ―――?と青藍が燦を見る。隼は怒り心頭とばかりに青藍と涬を睨み付け、燦の言葉を待っている。

「―――隼、頼む。無茶は承知だ。だけど、今やらなきゃ」