「知らないって、どう言う意味だ?」

意味が解らないと、鴻が首を傾げると、燦は慌てて顔を上げ、首を振った。

「あ、いや、そうじゃなくて。俺、母上がそんな凄い精霊って知らなかったんだよ」

ちょっと困った様にこちらを見ている涼と鴻にそう告げると、2人は顔を見合わせる。

「俺、物心着いた頃から精霊の里に居たし、母上のそんな力を感じる事も無かった、って事なんだ。こっちに移ってから、母上を知ってる方々に母上の事を聞いて。―――強い、とか強かったは良く聞いたけど、火の大精霊って聞いたのは初めてだったから、それで驚いただけだ」

「ああ、成程。そう言う事か」

「って言うかお前、青藍さまや隼さまの事も知らなかっただろ?」

鴻が燦の顔を覗き込むと、燦はほんの少し舌を出し、苦笑いを浮かべた。

「ああ、知らなかった」

「くくっ。知らない内に大精霊の隼さまを使役し、神鳥青藍さまから可愛がられてるって訳だ」

「有る意味恐ろしいやら羨ましいやら。――――でも少しは勉強しろよ?」

「それは鴻には言えないだろ?鴻も燦と共に少しは勉強したらどうだい?」

楽しげに涼が鴻の顔を覗き込むと、鴻はバツが悪そうにそっぽを向いた。

その姿に思わず吹き出してしまう。

兄弟、しかも双子。羨ましいな。素直にそう思うと、自然と笑みが零れて来る。

意外と鴻も良い奴なのかもしれない。ただ、上手く表現出来ないだけで。

「何笑ってんだよ。お前も勉強不足だって言われてるんだぞ」

「俺は勉強不足って理解出来てるから良いんだよ」

軽く鴻に言葉を返すと、満面の笑みで鴻を見返してやる。

「はいはい、2人共、僕が知ってる事は教えてあげるから」

「あ、じゃぁ1つ」

涼の優しい言葉に間髪入れずに燦は手を挙げた。

「何だろう?ただし、知ってる事だよ?」

「うん。あの・・・・この天界に、滅んだ一族って有るのか?」

「「滅んだ?!」」

燦の質問に涼と鴻は同時に声を出し、首を傾げて燦を見る。

「―――――お前、な。滅ぶって・・・」

「いや、鴻。うん、燦?それは話すと長くなる。多分僕たちも一緒に風宮に行く事になるだろう。だからその時にこの話はしよう。順に説明を加えないと、解りにくいからね。それに――――――」

ちらりと涼はまだ近くで騒いでいる3人を一瞥すると、ふう、と息をついた。

「あれ。いつまでも終わりそうに無いし、何とかしてよ、本当」

「解った。うん、そうだな。向こうに行けば緋冴姉上も居るし、流迦だって聞きたいだろうから」

燦が頷きながら涼に答えると、涼の瞳が煌めいた。

「風姫は元気なの?」

「ああ、元気だ。色んな事が有って気落ちはしてるけど、さ」

「へえ。相変わらず仲良しなんだね。落ち込んでるってさ、鴻。鴻が苛めたからじゃないのかな?」

涼が悪戯っぽく微笑むと、鴻が涼を睨み付ける。

「あ、違うって。あれは俺たちが悪いんだし、それは関係無いからさ」

慌てて燦が涼の言葉を正した。

流迦が落ち込んでいるのは・・・・緋冴や咲良の事や・・・闇姫や土王の事だ。

俺が不甲斐ないから、優しい流迦は悩んでるに違いない。

「ふうん?それにしても、風姫はとっても可愛い子だったね、鴻?」

「だから、何で俺にばっかり振るんだよ、涼」

「いやぁ、随分気に入ってたじゃ無いか。一目惚れだったりして――――ね?」

「ばッ―――――!」

涼の言葉に見る間に頬を赤らめて必死で否定する鴻に、思わず息を飲む。

え、っと・・・それって。

「そんなんじゃ無い!」

「またまた。素直じゃ無いね。なぁ、燦。そう思わないか?」

涼のその言葉に、燦はどう答えるべきか、頭を巡らせていた。