「守ります、命に代えても」
「燦、死んでは行けない。簡単にそんな言葉を出しては行けない・・・」
龍迦は切なげに声を絞り出すと、燦の肩を抱いた。
「龍迦さま?」
「燦―――もし何か、誰にも相談出来るものが居なくなったら、その時は『隼』を召喚しなさい」
風王綾迦から賜った、あの高位の風霊を。
「隼、ですか?」
「ああ。彼女はきっと君の願いを叶えてくれる。君の味方だ。それに君にはまだ―――」
燦は気付いて無いのかもしれない。龍迦は言葉を切った。
燦の身体の中にはまだ高位の精霊が潜んでいる。それは微弱だが、龍迦にははっきりと感じる事が出来た。
「まだ?」
「いや、何でも無いよ」
龍迦は曖昧に笑顔を向けると、眼前で楽しげにしている流迦と緋冴を見つめ、声を掛けた。
「流迦。今日はお茶会なのだろう。そろそろ火王さまを解放してあげなさい」
「龍迦も一緒にどうだ?」
明るい声で緋冴が龍迦を誘う。
「―――いや、少々調べたい事が有るのでな。今から父王の処へ行くよ」
「皇の処へか。じゃ、俺も行く」
助かったとばかりに焔が慌てて龍迦の傍に駆け寄った。
「そうして頂けると助かります。―――燦、帰りは流迦を送ってくれるかい?」
「はい、勿論です」
燦の言葉に龍迦は満足気に頷くと、火王焔と出て行った。
空中を駆ける疾馬と火竜を見送ると、緋冴は仕切り直しと言わんばかりに、庭にお茶の用意をさせた。
「たまには火宮の外でお茶と言うのも良いだろう」
「気持ち良いですものね」
咲良が優しく答えると、流迦も頷いた。
「何だか、いつも私だけ蚊帳の外ですね・・・」
烟がつまらなそうに呟きながら、お茶を啜った。
「烟はまだ短慮過ぎる処が多いからな」
「酷いな、姉上」
「烟さまには緋冴さまや燦さまがいらっしゃいますから・・・これからですわ」
「優しいな、咲良は」
緋冴が呆れたように零すと、皆の笑い声が上がった。
「しかし―――華王の処にも、縁談が持ち込まれるかもしれないな」
「ええ・・・火王さま、風王さま、となれば・・・可能性は残っていますわね」
咲良は瞳に多少の翳りを出し、呟いた。
「蓮華、嘩、咲良―――誰にだろうな。それに、後は宵だ」
「萌さまはまだお小さいから無いでしょう」
咲良の的確な答えに緋冴は満足気に頷く。
「そうだな。何を考えてるのか―――全く読めん」
「姉上を妾妃だなんて、ね」
烟の言葉に緋冴は苦笑いを浮かべたが、瞬間、視線を周囲に走らせた。
ほぼ同時に、燦が駆け、緋冴たちを背中に庇う。
「烟、流迦と咲良さまを火宮へ」
「兄上?」
きょとんとした声に燦と緋冴は同時に叫んだ。
「「早くッ」」
烟はあたふたと2人を立たせる。
「誰だッ!」
燦の声が周囲に木霊した。
「―――気付かれるとはお見事です。火の王子。そして火の姫。決して邪気が有る訳ではございません。どうかお許しを」