「なッ――――」

燦と、焔、そして緋冴がその言葉に絶句した。

「きゅ、求婚ですって?」

「ああ。話は聞いた。緋冴にも縁談が来たそうだね」

流迦は兄の問い掛けに素早く頷き、緋冴を見た。

ふつふつと怒りが湧いてくるのが解る。

何て、何て男なの!

「流迦。風宮には母上と蒼迦が居る。一筋縄では行くまいよ―――」

「ッ!でも!―――」

「龍迦。土王は流迦を正妃にと?」

緋冴の落ち着いた声に、龍迦はゆっくりと首を振った。

「正妃?いや、妾妃としてだ」

「流迦も、妾妃―――?」

「では、土王はまさか、陽の一族の姫を全員娶るつもりか?!」

「そうとは限るまいが・・・」

「どっちでも良いッ!!!」

緋冴と龍迦の話に焔は憎々しげに割って入ると、苛々した感情を隠そうとせずに、言い放った。

「緋冴はやらん。勿論流迦もだ。よりによって妾だとッ。笑わせやがる」

「お父さま・・・」

「風宮に蒼迦が居るなら好都合。あいつなら半端無くあの使者をやり込めるに決まってる」

焔の言葉に燦は心の中で大きく頷いた。

間違い無い。燦に向けられていた矛先は間違い無く土王に向けられたはずだ。

―――有る意味、味方ならば心強過ぎる。

「闇は龍迦お兄さまと蒼迦お兄さま。土は緋冴さまと私。では後は水の一族さまですね」

「ふむ・・・」

水の一族―――涼と鴻の美しい顔を思い出し、燦は嘆息した。

あの美しい双子も誰かを娶りたいと言い出して来るのだろうか。

「あ―、水は大丈夫だ。あいつらは」

焔はぶんぶんと手を振ると、久しぶりに笑顔を向けた。

「何故解るのです?」

「ああ、水は…そんな奴らじゃ無いから、土みたいな無体な事は言わねえよ」

「良くご存知なのですね、父上」

「――ん。まぁな・・・と言うか冷めてるからなぁ、あいつ」

焔の顔がどことなく何かを懐かしむ顔に変化した。

「父上と、水王さまは旧知の仲なのですよね」

「うん?まぁな。昔女を取り合った。しかも3人も」

「「「「はッ!!!???」」」」

燦達の声に焔はしまったと口を噤んだが、周囲の眼は既に好奇心に満ちていた。

「え、それはやはり、綾迦さまとお母さま?あと1人は誰だ?」

「しゃ、灼鳴はちが・・・」

「では綾迦さまとッ、誰なのです!白状なさいッ!!」

楽しげな声が飛び交い、龍迦はほっと微笑んだ。

やはり火王は凄い。一瞬にして和やかな雰囲気に変えてしまう。自分の怒りを最大限に出してから見せるその優しさ。

でも―――自虐的な処はどうかなと思いますよ、火王さま。

龍迦は自分には出来ないな、と呟き、楽しげな緋冴と流迦を見つめた。

「龍迦さま」

不意に労わる様な声で龍迦に燦が囁く。

「解ってるよ、燦―――このままでは済まないだろう。特に土王は」

「しかし、闇姫も気になります」

「流迦に聞いたのだね―――。そう、母は黒い亀裂の話をしていたよ。もしやそこに落ちれば闇の一族の住処まで行くのかもしれないね」

「――ッ、そんなッ」

「根拠は無い。無いんだ―――だが、母の問い方は明らかに朧どのを疑っていた」

龍迦の言葉がまたもあの黒い穴を思い出させる。

「闇の住処・・・」

「私には、闇の朧どのが流迦を狙っているとしか思えない。そして土王もね。」

「何故、何故流迦なのですか?」

「―――それを知るのは今は早い。蒼迦ですら聞かされていない。燦、君に出来る事は流迦を守り続ける事だ」