緋冴の話を聞きながら、咲良は蒼迦との婚姻の話を皆に話すべきか、考えあぐねていた。
――――せめてここに青藍が居れば。
縋る相手を見つけ出せないまま、咲良は俯いた。
「しかし、姉上・・・風王さまの事です。もしや気ままに仰ったのかも・・・」
「烟、綾迦さまを侮るな。―――確かに、自由気ままな所は多々有るが・・・今回は何か有る。そう思う」
「―――あの、緋冴さま、少しお話しても宜しいですか?」
流迦がおずおずと声を掛け、燦が頷くのを確認すると、陰の一族、闇の朧について語り始めた。
「・・・闇姫、か・・・」
話を聞き終わると緋冴はゆっくりと立ち上がり、考え込む。
「はい、緋冴さま」
「話は婚姻の話、だったのだな?」
流迦はこくりと頷くと、続いて黒い穴の話を始めた。その話は初耳だったのだ、緋冴と咲良はみるみる表情を曇らせ、燦に労いの言葉を降らした。
「成程、それで合点が行ったな。何故綾迦さまがお前に隼を与えたのか―――」
「はい、そして龍迦さまが燦さまに警護をお頼みしたのも――――」
全て納得した様に緋冴と咲良は互いに頷き合った。
「しかし、姉上。あの穴は・・・・」
燦が緋冴に問い掛けると、緋冴はゆっくりと首を振った。
「解らぬ。解らぬが――――綾迦さまが闇姫・・・朧と言ったか、彼の者に問い質したのならば、闇の一族が関わっているのだろう」
緋冴の答えに満足気に燦は頷いた。
「はい、闇の姫が関わっているのは私も感じました。しかし、風王の領域でその様な事を簡単に出来るとも思えません」
「その通りだ。綾迦さまともあろう方がそんな簡単に・・・」
そこが解らぬ。緋冴はそう呟くと、黙り込んでしまった。
「燦さま・・・」
流迦の瞳が不安気に揺らめいた。
「それに、今回の華祭・・・何故私が舞うだけで『風華祭』となるのでしょう?」
確かに・・・燦は流迦の言葉に首を傾げた。
ただ風姫が舞うから、なのか――――?
「そこは、余り考えなくても良いのでは無いですか?風姫さま」
「烟、根拠でも?」
「だって兄上、考えてみて下さい。風姫が舞うから、ですよ!間違い有りません」
烟の自信有り気な声が周囲に満ちたが、流迦も燦も顔を見合せたまま押し黙るままだ。
「烟、少し黙ってろ」
緋冴の声がだるそうに響き、烟はつまらなさそうに口を噤んだ。