焔の悲痛な叫び声をものともせず、緋冴は燦と流迦、そして烟を連れ立って客間へ入った。

「流迦!」

客間に入ると咲良が待ちかねて居たかの様に立ち上がり、流迦に近寄った。

「まぁ、咲良!驚いた。咲良もお呼ばれしていたのね」

「ええ、緋冴さまに。それにしても、先程の火王さまの声ったら―――思わず吹き出したわ」

そしてまた思い出したかの様に可笑しそうに笑うと、流迦の頬をつついた。

「な、なあに・・・?」

「何でも無いわ」

咲良は頬を赤らめる流迦に微笑むと、緋冴に誘われるままに座った。


「さて、と――――。今日はわざわざ足を運んで貰ってすまない」

緋冴は豪奢な机に両肘を着くと、両手を顎の下で組み、話し出した。

「実は、まぁ、大体見当は付いているだろうが・・・先日の風宮での話だ」

「婚姻の一件ですわね」

咲良の返事に緋冴は微笑むと、そして力強く頷いた。

「それでだ――――私も父王を問い質してみたんだ」

「姉上に婚約者がッ?!・・・・同情します・・・婚約者の方に・・・」

烟が最後の言葉を小さく呟き、俯いた。

「馬鹿ものが。火の一族は風の一族同様、婚約者は自分で選んで良いと父王が仰っただろうがッ!」

「ひ、緋冴さま・・・まぁ、そんな怒らずとも・・・」

烟に助け舟を出すと、咲良は先を促す。

「烟、後で覚えておけよ。・・・いや、聞いたのは他の一族だ。華と光の一族」

「華の?」

「そうだ、咲良――――つまり咲良の婚約者候補も聞いた」

はっと咲良は息を飲み、燦の顔を見た。

先日、燦に話してしまおうかと思っていた、その話を流迦の前でするのはやはり躊躇う。

「萌、宵、右梗、蓮華、左梗、嘩。そして・・・咲良」

「それで陽の一族は全部?」

「いや、ここにまずは私――緋冴、燦、烟。そして風だ。龍迦、蒼迦、流迦」

「取りあえず我々も入るのですね、姉上」

そうだ、と緋冴は頷き、苦々しげに呟いた。

「あの時、やはり光王さまと華王さまは同意はしなかった。向こうは我々を婚約者候補としている、と言う訳だ」

「そうでしょうね、確かに」

「そう。それを父王に問い質した」

緋冴は大きく溜め息を着くと、皆を見回した。

「つまり、選ぶ権利は与えられてはいるものの――――選ばれてもいる訳だ」

「でも、自分達で選べば良いのでは?先程姉上もそう仰っていたでは無いですか」

烟は頭をひねりながら緋冴の不機嫌そうな顔を見た。

「・・・・あのな。例えば、だな。よし、華王の処で考えよう。もし私の婚約者が右梗だったとしよう。しかし私が選んだのが左梗ならば?華王は頑なに右梗と結婚させようと画策するだろう。だが私が選んだのは左梗。つまりいつまでたっても結婚出来なくなる」

「・・・あ、確かに」

「だろう?それに、王同士で話し合って決めれば良いとも思わないか?それから4王で決定した事を告げれば良いのに、なぜあの時に綾迦さまは仰ったのだろう?何か思惑が有るはずだ。私はそう感じる」

そして、その理由を龍迦は知っている。間違い無い。

緋冴はそう確信しながら皆の意見を待った。