燦さまにお会いしたい・・・
燦の事を考えるだけで高鳴る胸を抑え、流迦は小さく溜め息を着いた。
思いがけず愛しい人になった燦の照れた笑顔を思い出しながらほんの少し微笑む。
嫌だ、私ったら――――。思い出すだけで笑顔が零れるなんて。
「全く、こんな所に居たのか」
不意に掛けられる声に振り向くと、そこには綾迦と龍迦が連れ立って佇んでいる。
「お母さま、お兄さま!まぁ、いつからいらしたの?」
「客人が来るから支度しなさい、流迦」
「お客さま・・・?どうなさったの、龍迦兄さま。そんな怖い顔・・・」
「いいから早く支度しなさい。良いね、流迦」
兄のどことなく厳しい声に流迦は慌てて頷くと、足早に自室へと向かった。
部屋付きの女官に手早く指示をお願いすると、ちょこんと椅子に座った。
女官は手慣れた手付きで流迦の髪を整え、軽く化粧を行うと、流迦に頭を下げる。
――――お客さまって誰なのかしら・・・
「流迦さま、客間へお出で下さいとのことです」
「ええ、はい、解りました」
女官にお礼の言葉を伝えると、流迦は客間へと歩き出した。
ゆっくりと女官に付き添われながら歩いて行くと、前を歩く見覚えのない背中が見えた。
・・・女性?お客さまって女の方だったのかしら?
流迦は訝しげに首を傾げると、女官と共に客間へ足を踏み入れた。
「流迦、そこへ。龍迦、蒼迦。こちらは陰の一族[闇]の姫君だ」
流迦が客間に入った瞬間に綾迦の声が響き、その闇の姫君―――はゆっくりと綾迦から流迦達の方へと向き直った。
黒曜石に光を湛えた瞳、腰まである漆黒の髪。儚げな印象よりもどことなく気が強そうな印象を受ける。切れ長の瞳がそう見せるのかもしれない。
「初めまして、風の皆さま。私、朧と申します」
「朧さま・・・」
「あなたが噂の風姫さまね。成程、確かにお美しい方ね」
初対面の女性にそんな風に言われた事に思わず流迦は羞恥に頬を赤らめた。
彼女の言い方に棘を感じずにいられなかったからだ。
「あなたが龍迦さまで――――あなたが蒼迦さま・・・」
朧は品定めするかの様に龍迦と蒼迦を順に見つめると、ほんの少し口の端を持ち上げた。
その朧の表情に龍迦も蒼迦も不快感を隠せない。
「闇の姫、今日は一体何用だろう?あなたのご要望通り子供達も集めた。そろそろ話を始めて貰いたい」
綾迦の声は不機嫌さを隠しもせず、響く。
「ああ、そうですわね、風王さま。申し訳ございません。実は、今回、婿選びに参ったのです」
「――――ほう?」
意外な話に綾迦の瞳の端がぴくりと動いた。
「誰もが欲する風の力―――私だって勿論欲しい」
「・・・・不躾で尚且つ非常識だな」
「まぁ、風王さま。いけませんか?」
「不愉快なのには違いない」
「まぁ、天下の風王さまがこんなこと位で?不愉快ですか・・・」
綾迦の威圧にも全く悪びれずに答え、高らかに笑う朧に流迦は異常な感覚を感じていた。
兄との結婚―――果たしてそれだけ、なのだろうか?
「そうそう、風王さま。母がどうぞ宜しく、とのことでしたわ」
朧はそう言うと、じんわりと笑みを浮かべ、綾迦を見つめた。
おじいちゃん無事退院しました。久しぶりに四国へと帰省・・・。
つ、疲れました。いや、マジで。