風の向こうに流迦が楽しげに精霊たちと戯れている。柔らかな光がまるで彼女の為だけに差し込んでいる様に見える。
流迦とはあの宴以来ろくに話もしていない。話し掛けても小さく答えるだけですぐに自分の傍を離れてしまう。
ク、と拳を握りしめ、蒼迦は流迦を見つめた。
どれだけ自分を抑えようと思っても、流迦が絡むと自分を抑えきれない。
そんな自分を恥じいっても、時は戻る訳もない―――――。
咲良の事は確かに自己嫌悪になっている。あの後すぐに詫びの書状と彼女に似合いそうな首飾りを贈った。咲良からの返事も優しいものだった。
咲良の言う事は最もだ。流迦が幸せになるのならば本当はそれを願う事が兄として、男として、正しいのかもしれない。
だが――――何故、なのだろう。どうしてこんなに、流迦を愛しているのだろう。
あの火の王子・・・燦が現れてから、流迦を檻の中に入れてしまう自分が情けなく感じる。
軽く首を振ると、流迦をもう一度見つめ、そして歩き出した。
『あ、蒼迦さま』
軽い羽音をさせ、青藍が蒼迦に飛び近づいた。
「やあ、青藍。今日の調子は良いか?」
『ええ、まぁ。蒼迦さまはどちらへ?』
「いや、決めてはいないんだ」
『・・・・まだ、流迦さまと仲直り出来てないんですか?そんな暗い顔をして』
青藍の言葉がチクリと胸に刺さる。
「――――ああ、残念ながら、ね」
『蒼迦さまは、流迦さまの事になると少々お熱くなり過ぎますからね』
「困った奴だな、俺は」
思わず自嘲気味に言うと、青藍は困った様に羽を拡げ、肩に留まった。
『解ってらっしゃるなら、少々緩めてみては?』
「烟や右梗、左梗・・・・他の王子ではこんな事は無いのだ。それは青藍も解るだろう?」
『――――燦さまだから?ですか?』
青藍の優しげに問う声に、軽く頷く。
「怖いんだろうな、俺は」
『・・・怖い。成程・・・』
「自分がここまで子供だとは、思わなかったよ、青藍」
『蒼迦さま、今気付かれた時点で1つ大人になられたのだから良いでは有りませんか』
「・・・ありがとう」
『風華祭はもうあと数日です。燦さまをすぐに好きになれなくても、これから好きになれる可能性はたくさん残ってますよ。勿論流迦さまと仲直りの機会もたくさん有ります』
「ああ、そうだな――――そうだ」
最後は自分に言い聞かせる様に小さく頷くと、蒼迦はほんの少し上向きになった気持ちと共に歩き出した。