『・・・・』
青藍は綾迦の肩先から身を翻すと燦の肩に戻り、大きく溜め息を着いた。
「何だよ、青藍。大げさな」
『風矢さまは本当に女好きだなぁと思いましてね』
「―――――――ッ?!」
青藍の言葉に思わず燦は口元に手を当て身じろぐ。
『ああ、そう言う意味では無く・・・何真っ赤になってるんですか、と言うかどこまで純なんですか』
燦の態度に青藍は呆れ声を出しながら羽を拡げ、燦の頬をわさわさと撫でた。
「ばッ・・・――――だ、だいたい青藍の言い方が悪いんだぞ・・・」
『・・・・はいはいそうですね・・・』
真っ赤に頬を染める燦から視線を外し、流迦を見ると、幸せそうに燦と青藍のやり取りを見守っている。
「青藍、あまり燦さまをからかわないでね?」
『流迦さま、何とお優しい』
「それにしても――――何故今、こんな話になったのだ?青藍」
緋冴が話に加わった。横では咲良も同様に頷いている。
確かに、咲良は婚姻の話を隠そうとまでしていたのだからその気持ちも解らなくは無い。
『すみません、緋冴さま、咲良さま』
申し訳なさそうに2人を見上げると、緋冴と咲良の視線は自然と龍迦へと移る。
「・・・・・」
龍迦は何も言わずただ、唇を噛み締め、佇んでいた。
その姿に緋冴は何も言わず肩を叩き、咲良は視線を伏せる。
「龍迦」
「緋冴、今は問うな。――――いや、聞かないでくれ」
「・・・・・駄目だ。お前のそんな顔は見たくない」
「龍迦さま、緋冴さまの仰る通りですわ。何か心に留める事が有るのなら、私・・・」
「咲良の言う通りだ」
咲良の控えめな援護射撃を受け、緋冴は龍迦に詰め寄る。
「婚姻、か。緋冴にも歌姫にも婚約者が居るのかな?」
「はぁ?」
思わぬ反撃に緋冴は素っ頓狂な声を上げ、咲良はさっと表情を変えた。
「緋冴と結婚する相手はどんな男だろうね」
「話をすり替えるな」
軽く咳払いをしながら緋冴が厳しい声を出す。
「いや、緋冴と結婚出来る相手は――――きっと幸せだろうな」
どことなく寂しげに微笑を浮かべる龍迦に、咲良は胸がざわつくのを感じた。
何とも言えない不安感がさざなみの様に咲良の胸に拡がって行く。
それは緋冴も感じている様だ。
―――――――何か、有るんだ。
燦は青藍に視線を向け、そして胸の辺りで拳を握り締めた。
「龍迦」
緋冴の問い掛けに、龍迦はもう何も答えなかった。