全く・・・

翼を伸ばすと、ほんの少し力を込めた。

漆黒の羽が一羽、また一羽と落ちて行く。


グッと力を伸ばすと、久しぶりの人型になる。

コキコキ、と首を折ると、ゆっくりと腕を伸ばした。


久しぶりの人型は良いものだ。


しかし―――――。

風矢は相変わらず面白い。隼を燦に遣る等と。あの跳ねっ返り女を燦がどう使いこなすのか、気にならない訳でも無い。


風矢と契約してからもう何劫年経つのだろう。

考えてみると、何故風矢と契約したのかすら忘れてしまう程だ。


風矢に会い、風矢を救い、守り、走り去った過去は掛け替えのない想い出となりつつ有る。

いつしか極上の女になった風矢。

そして数多の男を蹴散らし続けた時代には痛快過ぎて人型になって風矢と飲み明かした事も有る。

風矢は俺の人型が好きだったからあの頃は良く皆で、遊びまわったものだった。


さてね――――。風矢の娘の流迦もまた初めての恋に奔走するのだろうか。

またあの頃の様に自分は流迦を風矢の様に守って生きて行くのかもしれない。


いや、今回は燦がいるから出番は無いか?

存外、風矢同様自分も燦を気に入っている。龍迦や蒼迦が居なければ自分の持ち精霊の強いのを燦に遣りたいくらいだ。


流迦はやはり燦に惹かれているみたいだし――――。

そうなるとやっぱり蒼迦がまた怒り狂うな。いやいやいやッ、蒼迦が咲良とくっ付けば、上手く事は運ぶかッ?

な、訳無いか。

アイツは流迦以外はてんで駄目な奴だ。流迦流迦流迦――――・・・俺だけか?イラつくのは。

もっと他に目を向ければ良い女抱き放題だろうが。


軽く舌打ちをすると、傍に有った布を体に巻き付けた。いくら何でも人型で裸だと誰かに見られたら困る。

しかし恋愛ってのは。

遥か昔の自分の恋を思い出し、髪を掻き上げた。さらさらした髪が指先から零れ落ちる。


全く、これだから風矢の傍離れられないんだよなぁ――――。