燦は流迦を正面に持ち上げ、指先で涙を拭った。
流迦の泣いてる姿は一番嫌だ。
なのに拭う間も無く、流迦の涙は何筋も頬を伝った。
「泣くな。お前の泣いてるの、俺、弱いんだよ」
「・・・・・燦さま。流迦も燦さまが好き」
うん、解った。だから泣くな。
そう言い掛けたが、何と無く言葉を出せないままだった。
流迦の瞳から溢れてくる涙がとてつもなく綺麗に見えた。
流迦の華奢な肩を引き寄せ、再度口付けを落とすと、流迦の細い指先が燦の頬に添えられた。
何度も何度も口付けを交わし続けていると、火竜が小さく嘶いた。
まるでやり過ぎだ、と言わんばかりだ。
燦は苦笑いしながら流迦から一旦身体を離すと、流迦を抱いて火竜から降りた。
「帰ろう」
「・・・はい」
燦の言葉に流迦は頷き、そして微笑んだ。
流迦を地上に下ろし、手を繋ぐ。
燦の手の中にすっぽりと入ってしまう流迦の手を感じながら、燦はこの上なく満ち足りた気持ちだった。
「燦さま。華祭の後に宴が有るらしいのです」
流迦の言葉に、龍迦が力を貸して欲しいと言っていた事を思い出し、燦は歩みを止めた。
「流迦も、行ってみたいの・・・」
「う~ん・・・。それは出来ないかも」
燦の言葉に明らかに落胆の表情を見せる流迦に、燦は慌てながら言葉を続けた。
「実は、龍迦さまにお願いをされてるんだ、だから」
「龍迦お兄さまに?」
流迦の訝しげな声に燦は頷きながらも背筋を震わせた。
そうだった・・・・。流迦に口付けしたことが明らかになったら・・・。
考えるだけで恐ろしい。特に蒼迦の方は。
ちらりと流迦を見ると、この上ない表情で燦に微笑む。
・・・・・殺される覚悟くらい、当たり前だよな。
燦は流迦の手を力強く握り締めると、また歩みを進め、客間へと戻って行った。
客間には龍迦や緋冴、咲良や青藍も見え、燦と流迦の姿を見ると、周囲へと集まって来る。
「燦」
龍迦が優しく燦の名を呼び、近付くと、まずは流迦の頭を撫でた。
「燦、先程の話の華祭だが・・・」
「お兄さま、お願いが有るの」
流迦が龍迦の言葉を遮り、話に入った。
「どうしたんだ?そんなに思い詰めた顔をして」
「華祭の後の宴・・・私、燦さまと居たいのです」
流迦の言葉に龍迦は驚いた表情で流迦を見つめた。
ややあって龍迦は優しく微笑むと、流迦の肩に手を置いた。
「宴は燦と共に行けば良い。燦と一緒なら安心だ」