「相変わらず、蒼迦さまは流迦にベッタリなのね」
『さ、咲良さま・・・本人にも言うのはぶっちゃけ過ぎですよ』
咲良は流迦と蒼迦に近付くと、微笑みながら2人に話し掛けた。
「咲良!」
嬉しそうに流迦が咲良に近付くと、蒼迦が笑顔を咲良に向けた。
「歌姫。久しいな」
「まぁ。今更・・・余り溺愛すると、嫌われるわよ、蒼迦さま」
咲良が肩を竦めながら蒼迦に告げると、蒼迦は小さく声を出して笑った。
「相変わらず手厳しいな・・・だが」
蒼迦は優しく流迦の肩を抱き寄せると、愛しげに頬に口付ける。
「そんな事はきっと無いよ」
「お兄さま・・・」
流迦が擽ったそうに身を捩じらせると、青藍が溜め息を落とした。
『これですからね』
「そうね」
咲良と青藍の引き攣った笑いをものともせず、蒼迦はただ微笑んだ。
「咲良、緋冴さま達は・・・?」
流迦がほんの少し瞳を泳がせながら咲良に問い掛ける。
さま達ね・・・。
瞳が泳いでいるのが良い証拠だわ。
心の中で満足気に頷きながら、咲良はその満足感を表に出さぬ様に、素知らぬ顔で流迦の知りたいであろう人物の行動を流迦に答えた。
「龍迦さまと燦さまはお話しに外へ行かれたわ。緋冴さまは・・・さぁ?」
「えっ・・・お兄さまと?」
案の定、流迦は少し動揺を隠し切れないでいる。
「平気よ・・・お話に行かれただけだもの」
緋冴も(図らずとも)付けている事だし・・・
しかし、そこの処は隠しておくべきだろうと、素早く青藍に目配せすると、青藍もコックリと同意した。
「燦・・・あの火の王子と・・・?」
「そうよ、蒼迦さま」
蒼迦の表情がどんどんと険しくなって行くが、咲良は無視して話を進めた。
「龍迦さまが仰ったのよ。燦さまとお話したいって」
「兄上が!?」
「ええ。そんなに怖い顔をなさって。どうされました?」
蒼迦の表情だけを見ると燦を毛嫌いして居るのが良く解る。兄としての心配や、多少の嫉妬も理解出来るが、それでは蒼迦の人となりがまだまだ子供にも見えてくる。
咲良は男って・・・と心の中で呟くと、小さく溜め息を着いた。
「歌姫、あの男は流迦を浚った事が遭ってね」
「それはお父さまから伺いましたが、綾迦さまはお許しになられたのでしょう?」
「・・・・そうだね」
苦しげに蒼迦は呻くと声を絞り出した。
「しかし母上は何を考えておられるのか・・・隼を授けるなど・・・」
「・・・・」
流迦は苦しげな蒼迦の表情に哀しげに瞳を瞬かせると、俯く。
「それも綾迦さまがお決めになった事ではありませんか」
咲良は少し語尾に力を込めながら蒼迦に答える。
「それに・・・流迦が燦さまを嫌がって無いのなら・・・」
「それは!」
咲良の言葉に蒼迦は思わず声を荒げた。その声に驚いた周囲が蒼迦達を見つめる。
『そ、蒼迦さまっ・・・』
青藍がパサパサと翼を拡げて窘めた。
「あ・・・っ。いや、その、歌姫・・・すまない・・・」
蒼迦が慌てて咲良に許しを求める眼差しを向けた。
蒼迦は必死に自分を隠しているように見える。男として本当は嫌なのに、兄として何とか理解したいと自分自身葛藤しているのかもしれない。
そこに流迦に対する愛情が見えて、咲良は再度胸の痛みを感じた。
「良いのです、蒼迦さま。ご心配なのですね・・・」
「・・・すまない」
蒼迦はきつく唇を噛み締めると、咲良に再度心から詫びた。