『燦さま、さ、流迦さまにお言葉なんぞ』
耳元に嘴を寄せ、青藍が楽しそうに燦を促す。
「うん・・・でも、今はホラ」
燦が流迦の方を見ると、青藍も同じ様に流迦を見る。
『あ、蒼迦さま』
「無理だ」
燦が小さく呟くと、青藍もこっくり頷いた。
どうにも苦手なのを解ってくれているらしい霊鳥に何となくくすぐったい優しさを感じて、燦は指先で青藍の頭を撫でた。
『わっっっっっ!な、何ですか、燦さま!』
突然の感触に驚いたのか青藍が、羽を拡げる。
「ツルツルだな」
『当然です、毎日の毛繕いは欠かせない日課ですからねっ』
「気持ち良いな」
燦が指先で何度も青藍を撫でると、青藍は諦めたかの様にその指先に身を委ねている。
案外、気持ち良いのかもしれない。
「燦さま」
不意に燦に声を掛ける声が聞こえ、燦が振り向くと、咲良と緋冴が揃って佇んでいた。
「咲良姫!あ、あの・・・とても素晴らしかったです」
燦が慌てて青藍から指を離しながら咲良に頭を下げた。
「楽しんで頂けました?」
咲良が微笑みながら、首を傾げる。
「はい、とても・・・」
「咲良の声は美しいからな。何とも言えぬ気持ちになる」
緋冴が咲良の頭をぽんぽんと叩くと、咲良は照れた様に微笑む。
「流迦の舞が有ってこそ、ですわ、緋冴さま。全く・・・流迦の舞には誰も敵わないのですもの」
唇を少し尖らせて咲良が拗ねた顔を作ると、緋冴が堪らずに笑い出した。
「良く言う・・・お前は、本当に」
「あら、緋冴さま。舞には、ですもの。本当よ」
ころころと笑いながら、咲良は燦に向き直り、ね?と燦に話し掛けた。
そんな仕草が愛らしくてつい、燦も笑顔を向ける。
咲良は気さくな性格なのだろう。
「ところで、燦さま。流迦にはまだ・・・?」
「あ、はい・・・あの・・・」
ちらりと流迦を見るとまだ蒼迦と話している。
「蒼迦さまは流迦にベッタリね」
ふう、と聞こえよがしに咲良が呆れた口調で呟くと緋冴が何度を頷いた。
「妹離れ出来ない奴だ」
「本当。まぁ、蒼迦さまは次期風王候補なのですから、自由爛漫、赴くままに、って感じなのでしょうね」
「風王候補?」
燦が思わず聞き返すと、咲良がしまったと口を塞いだ。
「・・・・それは初耳だな、咲良」
緋冴が静かに聞き返すが、咲良は首を振った。
「ごめんなさい、口が滑りましたわ・・・。歌いすぎたのかしら」
「咲良」
緋冴が小さく笑みを浮かべ、咲良に詰め寄る。
「だめよ、だめだめ、緋冴さま、許して」
咲良が首を振りながら後ずさると、後ろから咲良の肩に優しく手が置かれた。
思わず咲良が振り向くと、そこには流迦の兄、龍迦が柔らかに微笑みながら立っていた。
「危ないよ、歌姫。緋冴、余り虐めるな」
龍迦は優しく言葉を出すと、燦にも優しく微笑んだ。
「火の王子。少し話したいんだ。良いかな?」
『えっ!』
燦が答える前に声を出したのは燦の肩に留まり続けている、青藍だった。