「燦、良く来たな」
躊躇いながら綾迦に近付いてくる燦に綾迦は嬉しげに声を掛けた。
「風王さま・・・」
燦が静かに膝を折ろうと前屈みになると、綾迦が制止の声を上げる。
「ああ、構わん、構わん。燦は賓客だ」
綾迦の声に周囲からまたもざわめきが起こった。
「いえ、あの・・・」
燦は困った顔で綾迦を見上げた。
これは不味いのでは無いか・・・また周囲から何と言われるか・・・いや、それよりもあの兄達の方が問題だ・・・。
周囲からの視線に背筋が凍る思いで、会釈だけを返した。
「うん。そうそう、皆にも報せておこう。まだ知らぬものも多いだろう」
綾迦は軽く手を叩くと、周囲の視線を向けさせ、そこら中から聞こえてくる囁き声を止め、燦の横に並び、肩を抱いた。
「あ、あのっ・・・」
思わず動揺した声を上げると、綾迦はニコリと微笑んだ。
「皆、良く聞け。彼は火王が王子、燦だ。燦は私の友の忘れ形見でな。殊の外目を掛けている者だ」
綾迦が言葉を紡ぐ度に何か力が働いているかの様に周囲の冷たい目が羨望を煌めかせ、燦に向かってきた。
「あ、あの・・・綾迦さま・・・」
『燦さま、ここはお静かに・・・!』
綾迦の言葉を遮ろうとやっとの思いで口にした声を肩に留まったままの青藍に制され、燦はぐっと言葉をに飲み込む。
「そして、今日流迦の命を救ってくれた。ありがとう、燦。恩に着る」
綾迦は燦の頬に軽く口付けを落とすと、驚きで目を見開いている燦や流迦を救った、との言葉にざわめつく周囲には見向きもせず、言葉を続けた。
「燦、お前に感謝の品を贈ろう。風王、風矢と風霊王、綾迦の名で」
「「「なっ!!」」」
綾迦の言葉にまず驚きの声を上げたのは陽の一族の王達、だった。3人それぞれが驚愕の目を綾迦に向け、それぞれに綾迦に声を掛けようとする。
しかし、綾迦が静かに両手の指先を合わせて行くと、静かに金色の光が綾迦の両手から沸き上がる。
「さあ、燦。受け取るが良い。これはお前の新しい力となるだろう」
綾迦の両手からのその優しくも眩しい光をおずおずと手を差し出し、受け取る。
な、んだ・・・?手に落ちた瞬間、スウッと光が直線に縮まって行く。
キラリ、最後に一瞬煌めくと、光は忽然と消えた。
「あ・・・」
『これは・・・!良かったですね!燦さま!』
青藍が興奮した声で燦に話し掛ける。
「「「り、綾迦!!!!」」」
3人の王が慌てふためいた顔で綾迦と燦に詰め寄って来る。その後ろには青ざめた流迦の兄・・・龍迦と蒼迦が見える。
「い、今のは、まさ、まさかとは思うが・・・」
「待て、皇。いくら綾迦でも・・・」
「いや、お前ら、綾迦だぞっ!」
・・・?な、何なんだ?
『燦さま!燦さまはこれから風霊の1つ、隼を使役出来るようになったのですよ!』
「風霊・・・?だって俺は火の一族だから使役など・・・」
青藍は興奮の羽をばさばさと羽ばたかせ、燦の問い掛けに頷いた。
『ええ、本来ならば。しかし、風矢さまが使役させてくれる様にしたのならば話は別です。しかも隼は風霊では上位。正確には風矢さまの使役する中では2番目に位置する風霊なのです!こんな栄誉は陽の一族さま誰一人ございません!燦さまが初めての事なのですよ!』