「水の王子、そういきり立つのはお止めなさい」
緋冴は鴻の怒りも露わな顔に微笑みかけた。
「それに風王、綾迦さまより流迦どのを連れて帰るように、と仰せつかっております」
その言葉に声を無くしたのは涼、鴻だけでは無く流迦も同様だった。
燦だけは、前回・・・燦が流迦を拐かした時の事を瞬時に思い出し、ほっと一息を着く。
「出来れば穏便に済ませて帰りたい・・・のですが」
緋冴は鴻をまたも見返し、赤い瞳を煌めかせた。
「火の姫よ、では今回の件は見逃せと?」
涼が今にも殴り掛かりそうな勢いの鴻を制しながら緋冴に問い掛ける。
「ではどうしろと?」
「・・・」
「此度の2人の失態の罰を水王劉さまにお伺いに参りましょうか」
「・・・」
「答えられませんか?」
緋冴の言うとおり、涼も鴻も何も答えずその美しい唇を硬く閉ざしている。
「・・・解ったよ、美しい赤のお姫さま。君は多分全部知ってそうだから・・・今回の事はもう良いよ」
涼は静かに言葉を紡ぐと流迦と燦に向き直り、微笑んだ。
「脅かしてごめんね、お二人さん」
「涼・・・」
鴻が美しい顔に苦痛を浮かべ、涼を見ている。
「鴻の言動には謝らないよ。やりすぎかもだけど・・・ここは本当に特別だからね、それ位は許して欲しい」
涼の言葉に緋冴は軽く頷くと、頭を下げた。
「鴻、どのでしたね。いつかお手合わせ願いたいくらいです」
「変わった女だな」
緋冴の言葉に面食らったかのように、鴻が優しい声を出した。が、慌ててそっぽを向くと、そのまま押し黙る。
「今からでも手合わせ願い出たいくらいなのですよ。弟達が居なければ。・・・では帰るぞ、弟。風姫」
「は、はい」
緋冴の言葉に慌てて流迦と燦が立ち上がり、緋冴の後に続く。が、ふと立ち止まると振り返り、深々と頭を下げた。
「本当に・・・申し訳ございませんでした」
「・・・」
燦は静かに頭を下げるに留まり、火竜へと流迦を乗せると、緋冴が飛び立つのと同時に空中へと駆けた。
それを見送る形になってしまった涼と鴻は美しい火竜も見上げながら瞳を細める。
「涼、良かったのか?」
「だって、火のお姫さん、全部知ってたと思うから」
「・・・」
「多分、お仕置きはあのお姫さんがしてくれるよ」
涼は銀髪を揺らしながら美しい笑みを自身の片割れに向けた。
「しかし、やっぱり風だな・・・。あんな・・・姫が居るなんて」
鴻が溜め息とともに呟く。
「気に入った子虐める癖、直さないとね、鴻」
「ばっっっっ、涼っっ!」
思いがけず赤くなった鴻に涼は楽しそうな笑い声を上げた。