ピクリ、と綾迦が眉を顰めた。風の宮殿では宴もたけなわ、と言った処だった。

だが、綾迦は不穏な気を身近に感じ、注意深く周りを伺う。



・・・この気は・・・

遙か昔に感じたことのある気だ。確か・・・。




綾迦がふと感じた気に視線を這わせていると、焔が同じく感じたのか、綾迦に近付く。


「綾迦」


「焔。感じたか」


焔は素早く首肯すると、体を近づけ、声を落とした。



「今のは・・・」


「久しく感じてなかった気だな」



焔と顔を合わせながらお互いに頷きあう。



「出るか?」


「いや・・・。ほっておけ」



綾迦は長い睫毛を伏せると、煙管に手を伸ばした。

焔が煙管に指を伸ばすとそこから火種が生まれ、煙管から白煙が立ち上る。



「しかし・・・。この気は・・・良いのか、綾迦」


「私やお前しか気付かぬ位小さいものだ。多少、歪みが出来た位だろう」


捨てておけ。焔の心配気な顔をよそに綾迦は瞳を閉じ、煙管を味わいながら呟く。



全く・・・こいつは剛胆過ぎるからなぁ・・・


焔は頭を掻くと、ふと思いついたかの様に顔を上げた。




「おい、流迦はまだ部屋にいるのか?要らぬ心配かもしれないが、こっちに一緒に居た方が・・・」


「流迦か?」



綾迦は焔を見上げながら焔の言葉を途中で切ると、実に嬉しそうに焔に答えた。



「流迦は今お前の処の燦と、逢瀬の真っ最中だ」


「おまっ・・・!!」



焔が息を飲み、頭を抱え込む姿を綾迦は楽しげに見つめながら考えを巡らせていた。


まあ、燦が着いているから滅多な事は無いだろうが・・・



『風矢さま!』



軽やかな羽音をさせ、青藍が咎める様に綾迦に声を掛けた。



「青藍、どうした?」



『焔さまのご心配も最もなのですから、あまりからかってばかりいると!』



綾迦は煙管の端で軽く青藍の羽を撫でると、解ったとばかりに頷いた。



「では誰かを迎えに遣らせよう。ならば良いか?」



『そうして下さい!本当にもう・・・焔さま、元気出して下さい』



青藍が焔に申し訳なさそうに頭を垂れ、綾迦に恨めしそうな顔を向ける。



「解った、解った。焔がまたうちの息子達に恨まれないようにうまく運ぶ様にするさ」


『一言多いのです!ほらまた、焔さまが落ち込まれるでは無いですか!!!それでなくともこの間の一件でだいぶ引かれているのに!!』



いや、青藍・・・それ、お前もきついから・・・焔はどんどん気持ちが暗くなるのを感じ、大きく溜め息を着いた。