「もうじきだな」
広い豪奢な部屋に若々しい声が響く。
寝所なのだろうか、部屋の中には天蓋付きの見事な寝台・・・。その上には見事な肢体を投げ打つ精霊達が見える。
声の主は部屋の中程に跪くもう1人に声を掛ける。
「・・・」
「だんまりか?」
からかう調子でまた声の主は寝台から立ち上げると、無造作に衣服を身につけた。
「まあ良い・・・」
口元をほんの少し歪ませる彼独特の笑いが部屋の中程に佇むもう1人・・・彼女の背筋に寒気を呼び起こさせた。
「お前の仕事は華祭・・・それだけにあるわけだからな」
「・・・はい」
か細い彼女の声が初めて響いた。
何かに耐える声なのだのだろうか、声は弱々しく響く。
「楽しみだな。風の女王・・・それに姫か」
そう呟くと何かに懸想するように視線を彼女に向けた。
「知ってるか?風の女王、綾迦を。あんな女は他にはいない」
彼女は答えず、ただ、沈黙し、彼の言葉に頷く。
「天界最強とも言われる強さ。そして、あの妖艶な美貌・・・馬鹿な親父殿だ。真っ向から向かっても勝てる訳等無いわ」
嘲る様にまたも口元を歪ませる。
「俺は手に入れる。天界最強の称号を。その証の風姫を。そして・・・・風の一族が持っている例のものもな。その為にお前がいる。他の奴らに奪われ無いよう、見張っておけ」
彼女は変わらず跪き、頭を軽く下げた。
「お前に敵う強者は陽の一族にはおらんだろう」
「・・・」
それには答えず、再度軽く頭を下げると、一瞬の内に忽然と姿を消した。
消えた彼女の跡に視線を這わせ、答える相手の消えた場所にまた声を掛けた。
「せいぜい働いてくれ。お前の可愛い妹の為にな」