―え…?

流迦の脳裏に一筋の光が点滅し、視線が泳ぐ。次いで足から全身に震えが起こった。


「チッ」


小さく燦が舌打ちする。
流迦の腕から手を離すと火竜に駆け寄り、流迦を火竜と自身とで挟み込んだ。


ピュッ、ピュッ…
燦と流迦を追い詰めるが如く、弓矢や容赦無く降り注いだ。


「誰だッ」


燦が手刀で軽く弓矢をいなしながら目に見えない襲撃者に厳しい声を上げた。


その燦の背に守られながら、流迦は足がすくみ、力が抜けそうになるのをじっと耐えていた。


何とかしなくちゃ…

流迦は怯える心を鼓舞させるかの様に身体中に力を込める。


「止めろ、流迦!!相手も解らずに力を使うな!!」


絶えず襲い掛かる弓矢を変わらず手刀で叩き落としながら、燦が諌める。


「はっ、はい!!」

燦の叱責に思わず集めていた風を解放していく。


流迦が風の力を解放した、その直後…


ガサ。


森林を抜け、現れた人物を見て、燦と流迦は思わず息を飲んだ。


煌めく白銀の髪、透ける様なブルーの瞳。

白銀の髪は肩の上で切り揃えられ、長く残る後ろ毛は背中に向けて結ってある。
アイスブルーの瞳は優しく光を集め、燦と流迦を真っ直ぐに見据えていた。

思わず流迦の唇から溜め息が零れる。


「誰?お前ら…」


形の良い唇を開き、気だるげな口調でその美貌の主が問い掛ける。


燦と流迦はここでまた息を飲む。


男…。その美貌からてっきり女性と思い込んでいた。どうやら燦もその様だ。


燦は男と知るや、またも流迦を奥へ押しやり、自分は整然と姿勢を正した。



一連の燦と流迦の行動を一瞥しながら、再度、その問い掛けられる。



「だから、誰?ここは立ち入り禁止なんだけど」


「俺は火の一族、燦」

警戒を解かぬ様、ゆっくり燦は答えた。

美貌の主は眉をほんの少し上げ、右手を上げる。


ザッ…と周囲にざわめきが起き、緊張した空気が和らぐ。
どうやら弓矢を止めてくれたな。

ほっ、と心の中で一つ息を吐く。
流迦を供だっての闘いは出来る限り避けたい。


「火、ね…」

ブルーの瞳を興味深げに燦に向けながら、燦の後ろに視線を逸らした。


「そっちも火の女?」


思わず流迦の身体がピクリと動き、燦の背中にすがり付いた。


「違う。彼女は、風の一族だ」


燦が告げた途端、ブルーの瞳が揺らめいた。


「風、かよ…」

これはまた…成る程ね…。思わず笑みが零れる。

額に手を当て、しばし考えると、ブルーの瞳を燦と流迦それぞれに向けた。