驚く流迦の顔を覗き込むと流迦の頭を撫で、風王はニコリと笑う。
「さて、と」
と腰に手を当てると王達に向き直った。
「何か楽しい事でも有ったのか?皆で揃って…」
艶然と微笑む母の姿に流迦は心の中で安心感を拡がらせて行く。
良かった…お母さまが来て下さるなんて…。でも、どうして私が困ってる事解ったのかしら…
流迦は少し首を捻りながら綾迦の周りに皆が集まるのを見て、こっそり燦の傍に近付こうとする。
「燦さま…」
「流迦!!ダメだと言ったろう!!」
背中から聞こえる見咎めた龍迦の厳しい声にビクッと歩みを止めた。
「近付くな!!」
龍迦が流迦に歩み寄ろうとする。が、龍迦の先を風王が遮る。
「は、母上!!」
思わず、驚きの表情で龍迦が母親を仰いだ。
「あの男は流迦を拐かしたんです!!母上からも厳しい罰を与えて頂かなければ!!詳細は父上達に聞いて下さい!!」
落ち着け、と興奮する龍迦の眼前に掌で制する。
「龍迦…お前は少し興奮し過ぎだ。」
静かに透き通る声で風王は龍迦に告げた。
「だいたい、流迦の話も聞かずにどうしてお前が決めるのだ?」
「しかし…!!」
「恐れながら、母上。龍迦兄上のお話は尤もです。火の王子は嫌がる流迦を無理に連れ去ったと、火の宮の女官が…」
蒼迦が兄の助太刀に、と声を掛け、女官に目を向けた。
「あー、いや、綾迦、すまん。龍迦や蒼迦が怒るのも無理は無いんだ」
火王が困り果てた様子で風王に謝罪の言葉を掛けた。
「謝る必要は無いぞ、焔」
「え、だって、ホラ…」
「謝る事は何一つ無い、と言っている」
火王を見つめた後、くっ、と顎を上げ燦を差すと、
「お前の息子は流迦の気分転換に火竜に乗せてくれただけだ」
「「は、母上!!」」
何で知ってるんだよ。
唖然とする火王の横で、龍迦と蒼迦から悲痛な声が上がる。
「だいたい、拐かすとは何なんだ。この私の娘を拐かすなんて豪気なヤツがいる訳無いだろう。この私の娘だぞ」
確かに…と妙に納得した面持ちで火王、光王、華王が頷いた。
ちら、と軽く3人の王を睨み付けると、流迦に微笑みを向けた。
「そうだろう、流迦。散策は次の華祭の為の気分転換だったのだろう?どうだ、少しは気が晴れたか」
母が来てからの展開になかなか付いては行けずじまいだったが、やはり母は燦の罪を軽く、もしくは無くしてくれるつもりなのだ。
その意図を理解するとコクコクと何度も頷く。
「はい、はい、お母さま。とても美しい景色でした。私、あんな遠いところまで1人では行けませんもの。燦さまのお陰です」
「な。じゃこの話はこれで終わりだ。」
肩を軽く竦めると、風王はまた艶然と微笑み、周囲を見渡す。
面喰らった顔で皆綾迦を凝視する。確かに、母親であり、風王である綾迦が罰しないと言うならそれに従うしかない。
「し、しかし、母上…!!」
龍迦はなおも母にすがる様に食い下がった。
「お前は…やはり皇の血だな。しつこいぞ。ま、しつこいからこそお前が産まれた訳だが」
呆れた口調でからかう様に光王の名前を出すと、光王が端正な眉をひそめる。その様子を見ると鈴が鳴る様に笑い声を上げた。
「お願い致します、母上。あの者に罰を…どうか流迦にはもう会わせない様に…」
「龍迦」
龍迦の言葉を途中で切り捨て、厳しい瞳で龍迦を射る様に見た。そして耳元に唇を寄せ、何かを呟く。
聴こえない…何なのかしら…しかし流迦は思わず問い質したくなる気持ちを抑えた。
龍迦の美しい顔がみるみると青ざめ、悔しげに唇を噛み締め、項垂れたからだ。
「おい、燦と言ったな」
龍迦から離れ、風王が燦の名を呼んだ。
燦が立ち上がり、風王の近くまで歩み寄る。
「膝は着くな。私に謝罪する必要は無いのだ。…それにしてもお前は母君に良く似ている。お前の母君はそれは素晴らしい火精霊だったのだぞ。」
母を知っている…燦は思わず風王を見た。
「火夜の精霊とも言われておってな、あれだけの精霊とはもう闘え……いや、うん、それは強かった。もう遥か昔に会えなくなってしまったが…」
かけがえの無い、友人だったのだ。
言葉を続けると、燦に近付き、抱き締めた。
周りの一同が息を飲む。
思わず固まる燦の耳元で、風王の透き通る声が囁く。
「燦。不粋かもしれぬが…流迦に…口付けはちと早いかもな」
燦が驚きの顔を隠せずにいると、風王は燦の正面に向き直り、
「娘の事はいつも見ているからな。つまり、だな。見てた訳だ、全部」
すまぬ。とそれは愉しそうに微笑んだ。
燦はただ茫然と風王の前に立ち竦む事しか出来ずにいた。
流迦と火竜で飛び立ってからずっと、この人は見ていたのだ…驚嘆と共に羞恥が沸き上がる。そして尊敬の念を込め、風王の言葉に頷いた。
「燦。またいつでも遊びに来い。お前は友人の忘れ形見だ。歓迎するぞ」
親愛の声色でぽんぽんと燦の肩を叩き、美しく笑った。
「さあ、皇、焔、煌。話は終わった訳だし、酒だ、酒っ」
いや、終わらしたんだろう…3人の王は誰に告げる訳でも無く、静かに溜め息を着いた。
「さて、と」
と腰に手を当てると王達に向き直った。
「何か楽しい事でも有ったのか?皆で揃って…」
艶然と微笑む母の姿に流迦は心の中で安心感を拡がらせて行く。
良かった…お母さまが来て下さるなんて…。でも、どうして私が困ってる事解ったのかしら…
流迦は少し首を捻りながら綾迦の周りに皆が集まるのを見て、こっそり燦の傍に近付こうとする。
「燦さま…」
「流迦!!ダメだと言ったろう!!」
背中から聞こえる見咎めた龍迦の厳しい声にビクッと歩みを止めた。
「近付くな!!」
龍迦が流迦に歩み寄ろうとする。が、龍迦の先を風王が遮る。
「は、母上!!」
思わず、驚きの表情で龍迦が母親を仰いだ。
「あの男は流迦を拐かしたんです!!母上からも厳しい罰を与えて頂かなければ!!詳細は父上達に聞いて下さい!!」
落ち着け、と興奮する龍迦の眼前に掌で制する。
「龍迦…お前は少し興奮し過ぎだ。」
静かに透き通る声で風王は龍迦に告げた。
「だいたい、流迦の話も聞かずにどうしてお前が決めるのだ?」
「しかし…!!」
「恐れながら、母上。龍迦兄上のお話は尤もです。火の王子は嫌がる流迦を無理に連れ去ったと、火の宮の女官が…」
蒼迦が兄の助太刀に、と声を掛け、女官に目を向けた。
「あー、いや、綾迦、すまん。龍迦や蒼迦が怒るのも無理は無いんだ」
火王が困り果てた様子で風王に謝罪の言葉を掛けた。
「謝る必要は無いぞ、焔」
「え、だって、ホラ…」
「謝る事は何一つ無い、と言っている」
火王を見つめた後、くっ、と顎を上げ燦を差すと、
「お前の息子は流迦の気分転換に火竜に乗せてくれただけだ」
「「は、母上!!」」
何で知ってるんだよ。
唖然とする火王の横で、龍迦と蒼迦から悲痛な声が上がる。
「だいたい、拐かすとは何なんだ。この私の娘を拐かすなんて豪気なヤツがいる訳無いだろう。この私の娘だぞ」
確かに…と妙に納得した面持ちで火王、光王、華王が頷いた。
ちら、と軽く3人の王を睨み付けると、流迦に微笑みを向けた。
「そうだろう、流迦。散策は次の華祭の為の気分転換だったのだろう?どうだ、少しは気が晴れたか」
母が来てからの展開になかなか付いては行けずじまいだったが、やはり母は燦の罪を軽く、もしくは無くしてくれるつもりなのだ。
その意図を理解するとコクコクと何度も頷く。
「はい、はい、お母さま。とても美しい景色でした。私、あんな遠いところまで1人では行けませんもの。燦さまのお陰です」
「な。じゃこの話はこれで終わりだ。」
肩を軽く竦めると、風王はまた艶然と微笑み、周囲を見渡す。
面喰らった顔で皆綾迦を凝視する。確かに、母親であり、風王である綾迦が罰しないと言うならそれに従うしかない。
「し、しかし、母上…!!」
龍迦はなおも母にすがる様に食い下がった。
「お前は…やはり皇の血だな。しつこいぞ。ま、しつこいからこそお前が産まれた訳だが」
呆れた口調でからかう様に光王の名前を出すと、光王が端正な眉をひそめる。その様子を見ると鈴が鳴る様に笑い声を上げた。
「お願い致します、母上。あの者に罰を…どうか流迦にはもう会わせない様に…」
「龍迦」
龍迦の言葉を途中で切り捨て、厳しい瞳で龍迦を射る様に見た。そして耳元に唇を寄せ、何かを呟く。
聴こえない…何なのかしら…しかし流迦は思わず問い質したくなる気持ちを抑えた。
龍迦の美しい顔がみるみると青ざめ、悔しげに唇を噛み締め、項垂れたからだ。
「おい、燦と言ったな」
龍迦から離れ、風王が燦の名を呼んだ。
燦が立ち上がり、風王の近くまで歩み寄る。
「膝は着くな。私に謝罪する必要は無いのだ。…それにしてもお前は母君に良く似ている。お前の母君はそれは素晴らしい火精霊だったのだぞ。」
母を知っている…燦は思わず風王を見た。
「火夜の精霊とも言われておってな、あれだけの精霊とはもう闘え……いや、うん、それは強かった。もう遥か昔に会えなくなってしまったが…」
かけがえの無い、友人だったのだ。
言葉を続けると、燦に近付き、抱き締めた。
周りの一同が息を飲む。
思わず固まる燦の耳元で、風王の透き通る声が囁く。
「燦。不粋かもしれぬが…流迦に…口付けはちと早いかもな」
燦が驚きの顔を隠せずにいると、風王は燦の正面に向き直り、
「娘の事はいつも見ているからな。つまり、だな。見てた訳だ、全部」
すまぬ。とそれは愉しそうに微笑んだ。
燦はただ茫然と風王の前に立ち竦む事しか出来ずにいた。
流迦と火竜で飛び立ってからずっと、この人は見ていたのだ…驚嘆と共に羞恥が沸き上がる。そして尊敬の念を込め、風王の言葉に頷いた。
「燦。またいつでも遊びに来い。お前は友人の忘れ形見だ。歓迎するぞ」
親愛の声色でぽんぽんと燦の肩を叩き、美しく笑った。
「さあ、皇、焔、煌。話は終わった訳だし、酒だ、酒っ」
いや、終わらしたんだろう…3人の王は誰に告げる訳でも無く、静かに溜め息を着いた。