「何、何なんだ、お前!!」

男が上ずった声で威嚇する。

「…お前には用は無い」

バゴッ。その声の持ち主は綺麗な回し蹴りで首元に踵を入れると、倒れ込む男をするりとかわし、私の前に立った。


-…だ、誰?

私は上から下まで何度も視線を往復しながらあたふたした。

はぁっと髪をかきあげる仕草や、ちらりとこちらを一瞥する女性に心当たりは無い。

-美人な、部類だよね…
一度見たら忘れない様な美人だ。腰まである長い髪、憂いのある瞳、ぷっくりとした唇…何より色気が有った。そして彼女は目も覚める様な真紅のロングドレスをまとっていた。


-ロングドレスと見た目だけで判断するなんて失礼だけど、こんな派手な人、知らない…

-わ、解らない…


「ふむ…。」
ほんの少し首を傾げながら彼女が私に近付いた。
「眷属の匂いと声がしたので来てみたが…」
そして私の髪を撫でた。

「お前は…」

『か、風矢さまっ』
ほんの小さな声が彼女の言葉を遮った。
声の主を探すと彼女の肩元で黒い小さな鳥が止まっている。
「なんだ、セイ。」
『風矢さまっ、お客様がっ、お店が満員になって来てますっ』

-と、鳥…鳥が…しゃべ、喋ってる…


「そうか、抜け出したからな。仕方ない、帰るか」

意にも介さず、鳥にそう告げると、私に向き直った。
-お、礼言わなきゃ…でも声が出てこない。喉がカラカラでピッタリくっついてるみたいだった。

そんな私の様子に気が付いたのか、
「また会える」
とふっと笑った。


「セイ、送ってやれ」
『はっ。』


セイ、と呼ばれた小鳥が肩元からパサッと羽根を拡げ飛び上がった瞬間…、私の体は浮かび上がり、空中を勢いよく移動して行った。